UNIT:ルート系@

2 ルート系の基底

2.1 基底

定義2.1 (基底)

Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とする.ΠΔ\Pi\subseteq\Deltaがルート系Δ\Delta基底(basis)であるとは,次の条件を満たすことをいう.

  1. (i)

    Π\Piはベクトル空間VVの基底である.

  2. (ii)

    任意のαΔ\alpha\in\Deltaに対して,α\alphaΠ\Piの元の線型結合として書くときの係数は,「すべて0以上の整数である」か「すべて0以下の整数である」かのいずれかである.

Δ\Deltaの基底Π\Piを固定するとき,Π\Piの元を,単純ルート(simple root)という.ルートのうち,Π\Piの元の線型結合として書くときの係数がすべて0以上の整数であるものをΠ\Piに関する正ルート(positive root)といい,すべて0以下の整数であるものをΠ\Piに関する負ルート(negative root)という.Π\Piに関する正ルート,負ルートの全体を,それぞれΔ+(Π)\Delta_{+}(\Pi), Δ(Π)\Delta_{-}(\Pi)と書く.

定義から明らかに,ルート系の基底は,割れないルートのみからなる.

Δ\Deltaをルート系とすると,Δ\Deltaの自己同型は,基底を基底に移す.これにより,自己同型群Aut(Δ)\operatorname{Aut}(\Delta)は(したがってWeyl群𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)も),Δ\Deltaの基底全体のなす集合に作用する.

命題2.2

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.異なる二つの単純ルートα\alpha, βΠ\beta\in\Piは,直角または鈍角をなす.

証明

基底の定義よりβαΔ{0}\beta-\alpha\notin\Delta\cup\{0\}だから,主張は系1.26 (1)の対偶から従う.∎

本小節の以下の部分では,Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とするとき,αΔ\alpha\in\Deltaに関するルート鏡映の鏡映面をΣα\Sigma_{\alpha}と書く.すなわち,

Σα=Kerα={vVα(v)=0}\Sigma_{\alpha}=\operatorname{Ker}\alpha^{\vee}=\{v\in V\mid\alpha^{\vee}(v)=0\}

である.,\langle\blank,\blank\rangleVV上の𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)不変な非退化対称双線型形式とすると,α,α0\langle\alpha,\alpha\rangle\neq 0かつα=2,α/α,α\alpha^{\vee}=2\langle\blank,\alpha\rangle/\langle\alpha,\alpha\rangleだから(系1.8),Σα\Sigma_{\alpha}はこの非退化対称双線型形式に関する𝕂α\mathbb{K}\alphaの直交空間となる.

定義2.3 (Weylチャンバー)

Δ\Deltaを有限次元実ベクトル空間VV上のルート系とする.VVの開集合VαΔΣαV\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}の各連結成分を,Δ\DeltaWeylチャンバー(Weyl chamber)という.

Δ\Deltaを有限次元実ベクトル空間上のルート系とすると,Δ\Deltaの自己同型は,WeylチャンバーをΔ\Deltaを有限次元実ベクトル空間上のルート系とすると,Δ\Deltaの自己同型は,Weylチャンバーを𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)も),Δ\DeltaのWeylチャンバー全体のなす集合に作用する.

補題2.4

実内積空間VVの元の族(vi)iI(v_{i})_{i\in I}が,次の条件を満たすとする.

  1. (i)

    あるwV{0}w\in V\setminus\{0\}が存在して,任意のiIi\in Iに対してvi,w>0\langle v_{i},w\rangle>0となる.

  2. (ii)

    任意の異なる二つの元ii, jIj\in Iに対して,vi,vj0\langle v_{i},v_{j}\rangle\leq 0である.

このとき,(vi)iI(v_{i})_{i\in I}は線型独立である.

証明

II^{\prime}, I′′II^{\prime\prime}\subseteq Iを互いに交わらない有限部分集合とし,各iIi\in I^{\prime}に対してai0a_{i}\geq 0,各jI′′j\in I^{\prime\prime}に対してbj0b_{j}\geq 0を任意にとる.もしiIaivi=jI′′bjvj\sum_{i\in I^{\prime}}a_{i}v_{i}=\sum_{j\in I^{\prime\prime}}b_{j}v_{j}ならば,これをvvと置くと,条件(ii)より

v2=iIaivi,jI′′bjvj=iI,jI′′aibjvi,vj0\lVert v\rVert^{2}=\left\langle\sum_{i\in I^{\prime}}a_{i}v_{i},\sum_{j\in I^{% \prime\prime}}b_{j}v_{j}\right\rangle=\sum_{i\in I^{\prime},\ j\in I^{\prime% \prime}}a_{i}b_{j}\langle v_{i},v_{j}\rangle\leq 0

だから,

iIaivi=jI′′bjvj=v=0\sum_{i\in I^{\prime}}a_{i}v_{i}=\sum_{j\in I^{\prime\prime}}b_{j}v_{j}=v=0

である.条件(i)のwV{0}w\in V\setminus\{0\}と上式の各辺との内積をとれば,ai=0a_{i}=0およびbj=0b_{j}=0を得る.よって,(vi)iI(v_{i})_{i\in I}は線型独立である.∎

定理2.5

Δ\Deltaを有限次元実ベクトル空間VV上のルート系とする.

  1. (1)

    Δ\Deltaの基底Π\Piに対して,

    C(Π)={vV任意のαΠに対してα(v)>0}C(\Pi)=\{v\in V\mid\text{任意の$\alpha\in\Pi$に対して$\alpha^{\vee}(v)>0$}\}

    Δ\DeltaのWeylチャンバーである.

  2. (2)

    Δ\DeltaのWeylチャンバーCCに対して,

    Δ+(C)\displaystyle\Delta_{+}(C) ={αΔα(C)>0},\displaystyle=\{\alpha\in\Delta\mid\alpha^{\vee}(C)\subseteq\mathbb{R}_{>0}\},
    Π(C)\displaystyle\Pi(C) ={αΔ+(C)αΔ+(C)の重複を許す二つ以上の元の和としては書けない}\displaystyle=\{\alpha\in\Delta_{+}(C)\mid\text{$\alpha$は$\Delta_{+}(C)$の重複を許す% 二つ以上の元の和としては書けない}\mbox{}\}

    と定めると,Π(C)\Pi(C)Δ\Deltaの基底である.

  3. (3)

    (1)と(2)の対応は互いに他の逆であり,Δ\Deltaの基底とWeylチャンバーとの間の一対一対応を与える.さらに,この対応は,自己同型群Aut(Δ)\operatorname{Aut}(\Delta)の作用を保つ.

証明

VV上の𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)不変な内積,\langle\blank,\blank\rangleを一つ固定する(系1.8).αΔ\alpha\in\DeltavVv\in Vに対して,α(v)=2v,α/α,α\alpha^{\vee}(v)=2\langle v,\alpha\rangle/\langle\alpha,\alpha\rangleだから,α(v)\alpha^{\vee}(v)v,α\langle v,\alpha\rangleは同符号である.

(1) 内積を用いると,

C(Π)={vV任意のαΠに対してv,α>0}C(\Pi)=\{v\in V\mid\text{任意の$\alpha\in\Pi$に対して$\langle v,\alpha\rangle>0$}\}

と書ける.Π\PiVVの基底だから,C(Π)C(\Pi)は連結である.C(Π)C(\Pi)の元とΠ\Piに関する正ルートとの内積は正であり,Π\Piに関する負ルートとの内積は負だから,C(Π)C(\Pi)

VαΔΣα={vV任意のαΔに対してv,α0}V\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}=\{v\in V\mid\text{任意の$% \alpha\in\Delta$に対して$\langle v,\alpha\rangle\neq 0$}\}

に含まれる.さらに,vVαΔΣαv^{\prime}\in V\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}C(Π)C(\Pi)と同じ連結成分に含まれるならば,任意のαΔ\alpha\in\Deltaに対してv,α\langle v^{\prime},\alpha\ranglev,α\langle v,\alpha\ranglevC(Π)v\in C(\Pi))は同符号だから,vC(Π)v^{\prime}\in C(\Pi)である.よって,C(Π)C(\Pi)VαΔΣαV\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}の一つの連結成分,すなわちWeylチャンバーである.

(2) α\alpha^{\vee}の符号は各Weylチャンバー上で一定だから,v0Cv_{0}\in Cを一つ固定すると

Δ+(C)={αΔv0,α>0}\Delta_{+}(C)=\{\alpha\in\Delta\mid\langle v_{0},\alpha\rangle>0\}

と書ける.αΔ+(C)\alpha\in\Delta_{+}(C)とすると,それがΠ(C)\Pi(C)に属していない限りα=α1++αk\alpha=\alpha_{1}+\dots+\alpha_{k}k2k\geq 2α1\alpha_{1}, \dots, αkΔ+(C)\alpha_{k}\in\Delta_{+}(C))と分解でき,各αi\alpha_{i}に対しても同じことがいえる.各iiに対してv0,αi<v0,α\langle v_{0},\alpha_{i}\rangle<\langle v_{0},\alpha\rangleだから,この操作は有限回で終了する.よって,Δ+(C)\Delta_{+}(C)に属するルートは,Π(C)\Pi(C)の元の0以上の整数を係数とする線型結合で書ける.Δ=Δ+(C)(Δ+(C))\Delta=\Delta_{+}(C)\cup(-\Delta_{+}(C))だから,残りのルートは,Π(C)\Pi(C)の元の0以下の整数を係数とする線型結合で書ける.

前段の結果から,Π(C)\Pi(C)VVを張ることもわかる.あとは,Π(C)\Pi(C)が線型独立であることを示せばよい.そのためには,Π(C)\Pi(C)補題2.4の条件を満たすことをいえばよい.条件(i)は,2.1節より満たされる.条件(ii)が満たされないとすると,あるα\alpha, βΠ(C)\beta\in\Pi(C)に対してα,β0\langle\alpha,\beta\rangle\leq 0となるが,このとき系1.26よりβαΔ\beta-\alpha\in\Deltaである.したがって,βα\beta-\alphaまたはαβ\alpha-\betaΔ+(C)\Delta_{+}(C)に属することになるが,いずれにしてもα\alpha, βΠ(C)\beta\in\Pi(C)に矛盾する.よって,背理法より,条件(ii)は満たされる.

(3) Π\PiΔ\Deltaの基底とすると,容易にわかるようにΔ+(Π)Δ+(C(Π))\Delta_{+}(\Pi)\subseteq\Delta_{+}(C(\Pi))だが,Δ+(Π)\Delta_{+}(\Pi)Δ(Π)=Δ+(Π)\Delta_{-}(\Pi)=-\Delta_{+}(\Pi)Δ+(C(Π))\Delta_{+}(C(\Pi))Δ+(C(Π))-\Delta_{+}(C(\Pi))はともにΔ\Deltaの分割を与えるから,Δ+(Π)=Δ+(C(Π))\Delta_{+}(\Pi)=\Delta_{+}(C(\Pi))である.したがって,Π(C(Π))\Pi(C(\Pi))Δ+(Π)\Delta_{+}(\Pi)の元のうちΔ+(Π)\Delta_{+}(\Pi)の重複を許す二つ以上の元の和としては書けないもの全体だが,正ルートの定義よりこれはΠ\Piに等しい.また,CCΔ\DeltaのWeylチャンバーとすると,容易にわかるようにCC(Π(C))C\subseteq C(\Pi(C))であり,CCC(Π(C))C(\Pi(C))はともにVαΔΣαV\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}の連結成分だからC=C(Π(C))C=C(\Pi(C))である.よって,(1)と(2)の対応は互いに他の逆であり,Δ\Deltaの基底とWeylチャンバーとの間の一対一対応を与える.

tAut(Δ)t\in\operatorname{Aut}(\Delta)とすると,Δ\Deltaの基底Π\Piに対して,

C(t(Π))\displaystyle C(t(\Pi)) ={vV任意のαΠに対してt(α)(v)>0}\displaystyle=\{v\in V\mid\text{任意の$\alpha\in\Pi$に対して$t(\alpha)^{\vee}(v)>0$}\}
={vV任意のαΠに対してα(t1(v))>0}\displaystyle=\{v\in V\mid\text{任意の$\alpha\in\Pi$に対して$\alpha^{\vee}(t^{-1}(v))% >0$}\}
=t(C(Π))\displaystyle=t(C(\Pi))

である(補題1.12).よって,上記の対応は,自己同型群Aut(Δ)\operatorname{Aut}(\Delta)の作用を保つ. ∎

系2.6

任意のルート系は,基底をもつ.

証明

一般性を失わず,𝕂=\mathbb{K}=\mathbb{R}と仮定する(命題1.7).このとき基底の存在は,定理2.5から従う.∎

Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とし,Π\Piをその基底Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とし,Π\Piをその基底Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とし,Π\Piをその基底Π\Piを基底とする格子spanΠ\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\Piに等しい.これを,ルート系Δ\Deltaルート格子(root lattice)という.

2.2 基底とWeyl群

補題2.7

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.単純ルートαΠ\alpha\in\Piに関する鏡映sαs_{\alpha}は,Δ+(Π)𝕂α\Delta_{+}(\Pi)\setminus\mathbb{K}\alpha上の置換を引き起こす.

証明

βΔ+(Π)𝕂α\beta\in\Delta_{+}(\Pi)\setminus\mathbb{K}\alphaとする.sα(β)𝕂αs_{\alpha}(\beta)\notin\mathbb{K}\alphaは明らかである.β=γΠaγγ\beta=\sum_{\gamma\in\Pi}a_{\gamma}\gamma(各aγa_{\gamma}0以上の整数)と表すと,あるγΠ{α}\gamma\in\Pi\setminus\{\alpha\}が存在してaγ>0a_{\gamma}>0となる.ここで,

sα(β)=γΠaγ(γn(γ,α)α)=γΠaγγ(γΠn(γ,α))αs_{\alpha}(\beta)=\sum_{\gamma\in\Pi}a_{\gamma}(\gamma-n(\gamma,\alpha)\alpha)% =\sum_{\gamma\in\Pi}a_{\gamma}\gamma-\left(\sum_{\gamma\in\Pi}n(\gamma,\alpha)% \right)\alpha

だから,sα(γ)s_{\alpha}(\gamma)Π\Piの元の線型結合で表すときのγ\gammaの係数もaγ>0a_{\gamma}>0である.これより,sα(β)Δ+(Π)s_{\alpha}(\beta)\in\Delta_{+}(\Pi)である.よって,sαs_{\alpha}は,Δ+(Π)𝕂α\Delta_{+}(\Pi)\setminus\mathbb{K}\alpha上の置換を引き起こす.∎

系2.8

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.Π\Piに関する割れない正ルート全体の和の1/21/2倍をρ\rhoと置くと,任意の単純ルートαΠ\alpha\in\Piに対して,sα(ρ)=ραs_{\alpha}(\rho)=\rho-\alphaである.

証明

Π\Piに関する割れない正ルート全体のなす集合を,Δ+(Π)\Delta_{+}(\Pi)^{\prime}と置く.sαs_{\alpha}は,Δ+(Π)𝕂α\Delta_{+}(\Pi)\setminus\mathbb{K}\alpha上の置換を引き起こし(補題2.7),割れないルートを割れないルートに移すから,Δ+(Π){α}\Delta_{+}(\Pi)^{\prime}\setminus\{\alpha\}上の置換を引き起こす.よって,

sα(ρ)=12(βΔ+(Π){α}sα(β)+sα(α))=12(βΔ+(Π){α}βα)=ραs_{\alpha}(\rho)=\frac{1}{2}\left(\sum_{\beta\in\Delta_{+}(\Pi)^{\prime}% \setminus\{\alpha\}}s_{\alpha}(\beta)+s_{\alpha}(\alpha)\right)=\frac{1}{2}% \left(\sum_{\beta\in\Delta_{+}(\Pi)^{\prime}\setminus\{\alpha\}}\beta-\alpha% \right)=\rho-\alpha

である.∎

補題2.9

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.s=sα1sαks=s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{k}}k1k\geq 1α1\alpha_{1}, \dots, αkΠ\alpha_{k}\in\Pi)とし,sskk個未満の{sααΠ}\{s_{\alpha}\mid\alpha\in\Pi\}の元の合成としては書けないとする.このとき,s(αk)s(\alpha_{k})Π\Piに関する負ルートである.

証明

s(αk)=sα1sαk1(αk)s(\alpha_{k})=-s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}(\alpha_{k})が正ルートであると仮定すると,sα1sαk1(αk)s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}(\alpha_{k})は負ルートだから,1ik11\leq i\leq k-1を適当にとって,β=sαi+1sαk1(αk)\beta=s_{\alpha_{i+1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}(\alpha_{k})は負ルートだがsαi(β)=sαisαk1(αk)s_{\alpha_{i}}(\beta)=s_{\alpha_{i}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}(\alpha_{k})は正ルートであるようにできる.一方で,sαis_{\alpha_{i}}𝕂αi\mathbb{K}\alpha_{i}に属さない正ルートを正ルートに移す(補題2.7).したがって,β𝕂αi\beta\in\mathbb{K}\alpha_{i}でなければならないから,

sαi=sβ=ssαi+1sαk1(αk)=sαi+1sαk1sαksαk1sαi+1s_{\alpha_{i}}=s_{\beta}=s_{s_{\alpha_{i+1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}(\alpha_{k}% )}=s_{\alpha_{i+1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}s_{\alpha_{k}}s_{\alpha_{k-1}}\dotsm s% _{\alpha_{i+1}}

となり(補題1.12),移項すれば

sαisαk=sαi+1sαk1s_{\alpha_{i}}\dotsm s_{\alpha_{k}}=s_{\alpha_{i+1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}

を得る.これよりs=sα1sαk=sα1sαi1sαi+1sαk1s=s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{k}}=s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{i-1}}s_{% \alpha_{i+1}}\dotsm s_{\alpha_{k-1}}となるが,これはkkの最小性に矛盾する.よって,背理法より,s(αk)s(\alpha_{k})は負ルートである.∎

定理2.10

Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とする.

  1. (1)

    Weyl群𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)は,Δ\Deltaの基底全体のなす集合に自由かつ推移的に作用する.

  2. (2)

    Π\PiΔ\Deltaの基底とすると,𝐖(Δ)Π\mathbf{W}(\Delta)\PiΔ\Deltaの割れないルート全体に等しい.

  3. (3)

    Π\PiΔ\Deltaの基底とすると,Weyl群𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta){sααΠ}\{s_{\alpha}\mid\alpha\in\Pi\}によって生成される.

証明

一般性を失わず,𝕂=\mathbb{K}=\mathbb{R}であり,VV𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)不変な内積,\langle\blank,\blank\rangleが定まっていると仮定する(命題1.7系1.8).Δ\Deltaの基底Π\Piを一つ固定し(系2.6より存在する),{sααΠ}\{s_{\alpha}\mid\alpha\in\Pi\}が生成する𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)の部分群を𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)と置く.まず(1), (2)で𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)に置き換えた主張(1), (2)を示し,次に(2)を用いて(3)を示す.

(1) 𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)Δ\Deltaの基底全体のなす集合への作用が推移的であることを示す.定理2.5より,𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)Δ\DeltaのWeylチャンバー全体の集合への作用が推移的であることを示せばよい.Π\Piに関する正ルートであって割れないもの全体の和の1/21/2倍を,ρ\rhoと置く.点vVαΔΣαv\in V\setminus\bigcup_{\alpha\in\Delta}\Sigma_{\alpha}を任意にとり,これに対して,s𝐖(Δ)s\in\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)s(v),ρ\langle s(v),\rho\rangleが最大となるようにとる.すると,任意のαΠ\alpha\in\Piに対して,

s(v),ρsαs(v),ρ=s(v),sα(ρ)=s(v),ρs(v),α\langle s(v),\rho\rangle\geq\langle s_{\alpha}s(v),\rho\rangle=\langle s(v),s_% {\alpha}(\rho)\rangle=\langle s(v),\rho\rangle-\langle s(v),\alpha\rangle

(最後の等号で系2.8を用いた)よりs(v),α0\langle s(v),\alpha\rangle\geq 0であり,またvΣs1(α)v\notin\Sigma_{s^{-1}(\alpha)}よりs(v),α=v,s1(α)0\langle s(v),\alpha\rangle=\langle v,s^{-1}(\alpha)\rangle\neq 0だから,s(v),α>0\langle s(v),\alpha\rangle>0である.したがって,s(v)C(Π)s(v)\in C(\Pi)であり,これはvvを含むWeylチャンバーがssの作用でC(Π)C(\Pi)に移ることを意味する.よって,𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)Δ\DeltaのWeylチャンバー全体のなす集合への作用は推移的である.

次に,𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)Δ\Deltaの基底全体のなす集合への作用が自由であることを示す.前段で推移性を示したから,s𝐖(Δ){idV}s\in\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)\setminus\{\mathrm{id}_{V}\}としてs(Π)Πs(\Pi)\neq\Piを示せば十分である.s=sα1sαks=s_{\alpha_{1}}\dotsm s_{\alpha_{k}}k1k\geq 1α1\alpha_{1}, \dots, αkΠ\alpha_{k}\in\Pi)とkkが最小になる方法で表示すると,補題2.9よりs(αk)s(\alpha_{k})は負ルートだから,特にs(Π)Πs(\Pi)\neq\Piである.これで,主張が示された.

(2) (1)より,Δ\Deltaのすべての基底の合併がΔ\Deltaの割れないルート全体に等しいことを示せばよい.Δ\Deltaの基底の元がすべて割れないルートであることは,基底の定義から明らかである.任意の割れないルートαΔ\alpha\in\DeltaΔ\Deltaのある基底に含まれることを示す.点v0Vv_{0}\in V

v0,α=0,v0,β0(βΔα)\langle v_{0},\alpha\rangle=0,\qquad\langle v_{0},\beta\rangle\neq 0\quad(% \beta\in\Delta\setminus\mathbb{R}\alpha)

となるようにとり,さらにϵ>0\epsilon>0を十分小さくとって

v0+ϵα,α>0,|v0+ϵα,β|>v0+ϵα,α(βΔα)\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\alpha\rangle>0,\qquad\lvert\langle v_{0}+% \epsilon\alpha,\beta\rangle\rvert>\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\alpha\rangle% \quad(\beta\in\Delta\setminus\mathbb{R}\alpha)

が成り立つようにする.すると,v0+ϵαVβΔKerΣβv_{0}+\epsilon\alpha\in V\setminus\bigcup_{\beta\in\Delta}\operatorname{Ker}% \Sigma_{\beta}だから,v0+ϵαv_{0}+\epsilon\alphaを含むWeylチャンバーCCがとれる.以下,定理2.5の記号Δ+(C)\Delta_{+}(C), Π(C)\Pi(C)を用いる.v0+ϵα,α>0\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\alpha\rangle>0だから,αΔ+(C)\alpha\in\Delta_{+}(C)である.また,α=β1++βk\alpha=\beta_{1}+\dots+\beta_{k}k1k\geq 1β1\beta_{1}, \dots, βkΔ+(C)\beta_{k}\in\Delta_{+}(C))とすると,v0+ϵα,α=v0+ϵα,β1++v0+ϵα,βk\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\alpha\rangle=\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\beta_% {1}\rangle+\dots+\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\beta_{k}\rangleだが,任意のβΔ+(C)α\beta\in\Delta_{+}(C)\setminus\mathbb{R}\alphaに対してv0+ϵα,β>v0+ϵα,α\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\beta\rangle>\langle v_{0}+\epsilon\alpha,\alpha\rangleだから,β1\beta_{1}, \dots, βkΔ+(C)α\beta_{k}\in\Delta_{+}(C)\cap\mathbb{R}\alphaでなければならない.さらに,α\alphaは割れないルートだから,k=1k=1かつβ1=α\beta_{1}=\alphaでなければならない.よって,αΠ(C)\alpha\in\Pi(C)である.これで,主張が示された.

(3) 任意の割れないルートαΔ\alpha\in\Deltaに対して,(2)よりあるt𝐖(Δ)t\in\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)が存在してt(α)Πt(\alpha)\in\Piとなり,このとき,sα=t1st(α)t𝐖(Δ)s_{\alpha}=t^{-1}s_{t(\alpha)}t\in\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)である(補題1.12).よって,𝐖(Δ)=𝐖(Δ)\mathbf{W}^{\prime}(\Delta)=\mathbf{W}(\Delta)である. ∎

系2.11

Δ1\Delta_{1}Δ2\Delta_{2}をそれぞれ有限次元ベクトル空間V1V_{1}V2V_{2}上の被約ルート系とし,Π1\Pi_{1}Π2\Pi_{2}をそれぞれΔ1\Delta_{1}, Δ2\Delta_{2}の基底とする.ϕ:Π1Π2\phi\colon\Pi_{1}\to\Pi_{2}は全単射であり,任意のα\alpha, βΠ1\beta\in\Pi_{1}に対してn(ϕ(β),ϕ(α))=n(β,α)n(\phi(\beta),\phi(\alpha))=n(\beta,\alpha)を満たすとする.このとき,ϕ\phiはルート系Δ1\Delta_{1}からΔ2\Delta_{2}への同型に一意に拡張される.

証明

Π1\Pi_{1}Π2\Pi_{2}はそれぞれV1V_{1}V2V_{2}の基底だから,ϕ\phiは線型同型写像Φ:V1V2\Phi\colon V_{1}\to V_{2}に一意に拡張される.仮定より,任意のα\alpha, βΠ1\beta\in\Pi_{1}に対して

Φ(sα(β))\displaystyle\Phi(s_{\alpha}(\beta)) =Φ(βn(β,α)α)\displaystyle=\Phi\left(\beta-n(\beta,\alpha)\alpha\right)
=ϕ(β)n(β,α)ϕ(α)\displaystyle=\phi(\beta)-n(\beta,\alpha)\phi(\alpha)
=ϕ(β)n(ϕ(β),ϕ(α))ϕ(α)\displaystyle=\phi(\beta)-n(\phi(\beta),\phi(\alpha))\phi(\alpha)
=sϕ(α)(ϕ(β))\displaystyle=s_{\phi(\alpha)}(\phi(\beta))

だから,任意のαΠ1\alpha\in\Pi_{1}に対して

Φsα=sϕ(α)Φ\Phi\circ s_{\alpha}=s_{\phi(\alpha)}\circ\Phi

である.したがって,線型同型写像Φ\Phiを通してWeyl群𝐖(Δ1)\mathbf{W}(\Delta_{1})𝐖(Δ2)\mathbf{W}(\Delta_{2})が対応するから(定理2.5 (3)),定理2.10 (2)と合わせて,

Φ(Δ1)=Φ(𝐖(Δ1)Π1)=𝐖(Δ2)Π2=Δ2\Phi(\Delta_{1})=\Phi(\mathbf{W}(\Delta_{1})\Pi_{1})=\mathbf{W}(\Delta_{2})\Pi% _{2}=\Delta_{2}

を得る.よって,Φ\Phiはルート系Δ1\Delta_{1}からΔ2\Delta_{2}への同型である.∎

命題2.12

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.次の条件は同値である.

  1. (a)

    Δ\Deltaは既約である.

  2. (b)

    Π∅︀\Pi\neq\emptysetであり,Π\Piを互いに直交する二つの空でない部分に分割することはできない.

証明

明らかに,Δ=∅︀\Delta=\emptysetΠ=∅︀\Pi=\emptysetとは同値である.以下,これ以外の場合を考える.

(b)(a)\text{(b)}\Longrightarrow\text{(a)} 対偶を示す.Δ\Deltaが可約であるとして,ルート系の直和分解Δ=Δ1Δ2\Delta=\Delta_{1}\sqcup\Delta_{2}であってΔ1\Delta_{1}, Δ2\Delta_{2}が空でないものをとる.i{1,2}i\in\{1,2\}に対してΠi=ΠΔi\Pi_{i}=\Pi\cap\Delta_{i}と置くと,これらは空でなく,Δ1\Delta_{1}Δ2\Delta_{2}は直交する(命題1.17)からΠ1\Pi_{1}Π2\Pi_{2}も直交する.これで,主張の対偶が示された.

(a)(b)\text{(a)}\Longrightarrow\text{(b)} 対偶を示す.Π\Piが互いに直交する二つの空でない部分Π1\Pi_{1}, Π2\Pi_{2}に分割されているとする.i{1,2}i\in\{1,2\}に対してΔi=𝐖(Δ)Πi∅︀\Delta_{i}=\mathbf{W}(\Delta)\Pi_{i}\neq\emptysetと置く.すると,定理2.10 (2)よりΔ=Δ1Δ2\Delta=\Delta_{1}\cup\Delta_{2}である.また,αΠ1\alpha\in\Pi_{1}に対してsαs_{\alpha}span𝕂Π1\operatorname{span}_{\mathbb{K}}\Pi_{1}を安定にし,βΠ2\beta\in\Pi_{2}に対してsβs_{\beta}span𝕂Π1\operatorname{span}_{\mathbb{K}}\Pi_{1}の点を動かさないから(Π1\Pi_{1}Π2\Pi_{2}が直交することによる),定理2.10 (3)と合わせてΔ1span𝕂Π1\Delta_{1}\subseteq\operatorname{span}_{\mathbb{K}}\Pi_{1}を得る.同様に,Δ2span𝕂Π2\Delta_{2}\subseteq\operatorname{span}_{\mathbb{K}}\Pi_{2}である.よって,Δ=Δ1Δ2\Delta=\Delta_{1}\sqcup\Delta_{2}はルート系の直和分解である.これで,主張の対偶が示された. ∎

2.3 単純ルートの和

命題2.13

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.正ルートの列α1\alpha_{1}, \dots, αkΔ+(Π)\alpha_{k}\in\Delta_{+}(\Pi)が,α1++αkΔ\alpha_{1}+\dots+\alpha_{k}\in\Deltaを満たすとする.このとき,{1,,k}\{1,\dots,k\}上の置換π\piであって,任意のi{1,,k}i\in\{1,\dots,k\}に対してαπ(1)++απ(i)Δ\alpha_{\pi(1)}+\dots+\alpha_{\pi(i)}\in\Deltaを満たすものが存在する.

証明

kkに関する帰納法で示す.k=1k=1の場合は明らかである.k2k\geq 2とし,k1k-1に対する主張は正しいとする.β=α1++αk\beta=\alpha_{1}+\dots+\alpha_{k}と置くと,n(α1,β)++n(αk,β)=n(β,β)=2n(\alpha_{1},\beta)+\dots+n(\alpha_{k},\beta)=n(\beta,\beta)=2だから,n(αi,β)>0n(\alpha_{i},\beta)>0となる1ik1\leq i\leq kが存在する.このiiについて,系1.26 (1)より,βαiΔ\beta-\alpha_{i}\in\Deltaとなる.そこで,αi\alpha_{i}を除くk1k-1個のルートに帰納法の仮定を適用すれば,kkの場合の主張が示される.これで,帰納法が完成した.∎

系2.14

ルート系Δ\Deltaから可換群AAへの写像f:ΔAf\colon\Delta\to Aが,次の条件を満たすとする.

  1. (i)

    任意のαΔ\alpha\in\Deltaに対して,f(α)=f(α)1f(-\alpha)=f(\alpha)^{-1}である.

  2. (ii)

    任意のα\alpha, β\beta, α+βΔ\alpha+\beta\in\Deltaに対して,f(α+β)=f(α)f(β)f(\alpha+\beta)=f(\alpha)f(\beta)である.

このとき,ffはルート格子spanΔ\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\DeltaからAAへの群準同型に一意に拡張される.

証明

Π\PiΔ\Deltaの基底とすると,ルート格子spanΔ\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\DeltaΠ\Piを基底とする格子だから,Π\Pi上でffに一致する群準同型f~:spanΔA\widetilde{f}\colon\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\Delta\to Aが一意に存在する.これがffの拡張であることを示そう.条件(i)より,正ルートβ\betaに対してf~(β)=f(β)\widetilde{f}(\beta)=f(\beta)を示せばよい.命題2.13より,単純ルートの列α1\alpha_{1}, \dots, αk\alpha_{k}を,α1++αk=β\alpha_{1}+\dots+\alpha_{k}=\betaであり,かつ任意のi{1,,k}i\in\{1,\dots,k\}に対してα1++αiΔ\alpha_{1}+\dots+\alpha_{i}\in\Deltaであるようにとれる.よって,条件(ii)より

f~(β)=f~(α1)f~(αk)=f(α1)f(αk)=f(β)\widetilde{f}(\beta)=\widetilde{f}(\alpha_{1})\dotsm\widetilde{f}(\alpha_{k})=% f(\alpha_{1})\dotsm f(\alpha_{k})=f(\beta)

である.これで,主張が示された.∎

命題2.15

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.λ\lambdaはルート格子spanΔ\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\Deltaの元であり,一つのルートの整数倍としては書けないとする.このとき,あるs𝐖(Δ)s\in\mathbf{W}(\Delta)が存在して,s(λ)s(\lambda)Π\Piの元の線型結合として書くときの係数に,正の整数と負の整数がともに現れる.

証明

一般性を失わず,𝕂=\mathbb{K}=\mathbb{R}であり,VV𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)不変な内積,\langle\blank,\blank\rangleが定まっていると仮定する(命題1.7系1.8).仮定より,λ\mathbb{R}\lambdaはルートを含まないから,vVv\in Vを,v,λ=0\langle v,\lambda\rangle=0かつ任意のαΔ\alpha\in\Deltaに対してv,α0\langle v,\alpha\rangle\neq 0を満たすようにとれる.さらに,Weyl群𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)はWeylチャンバー全体のなす集合に推移的に作用するから(定理2.5定理2.10),s𝐖(Δ)s\in\mathbf{W}(\Delta)を,s(v)C(Π)s(v)\in C(\Pi)定理2.5の記号を用いた)を満たすようにとれる.ここで,s(λ)=αΠpααs(\lambda)=\sum_{\alpha\in\Pi}p_{\alpha}\alphapαp_{\alpha}\in\mathbb{Z})と表すと,

0=v,λ=s(v),s(λ)=αΠpαs(v),α0=\langle v,\lambda\rangle=\langle s(v),s(\lambda)\rangle=\sum_{\alpha\in\Pi}p% _{\alpha}\langle s(v),\alpha\rangle

となるが,s(v)C(Π)s(v)\in C(\Pi)より任意のαΠ\alpha\in\Piに対してs(v),α>0\langle s(v),\alpha\rangle>0だから,係数pαp_{\alpha}には正の整数と負の整数がともに現れる.∎

2.4 双対ルート系の基底

補題2.16

有限次元実ベクトル空間VVの基底(ei)eI(e_{i})_{e\in I}(fj)jJ(f_{j})_{j\in J}

span0{eiiI}=span0{fjjJ}\operatorname{span}_{\mathbb{R}_{\geq 0}}\{e_{i}\mid i\in I\}=\operatorname{% span}_{\mathbb{R}_{\geq 0}}\{f_{j}\mid j\in J\}

を満たすならば,全単射ϕ:IJ\phi\colon I\to Jが存在して,各fϕ(i)f_{\phi(i)}eie_{i}の正のスカラー倍となる.

証明

(ei)eI(e_{i})_{e\in I}から(fj)jJ(f_{j})_{j\in J}への基底変換行列をP=(pij)(i,j)I×JP=(p_{ij})_{(i,j)\in I\times J}と置き,(fj)jJ(f_{j})_{j\in J}から(ei)iI(e_{i})_{i\in I}への基底変換行列をQ=(qji)(j,i)J×IQ=(q_{ji})_{(j,i)\in J\times I}と置く.仮定より,各成分pijp_{ij}qjiq_{ji}0以上である.いま,PPの一つの成分pi0j0p_{i_{0}j_{0}}が正であるとする.PPQQは互いに他の逆行列だから,任意のiI{i0}i\in I\setminus\{i_{0}\}に対してjJpi0jqji=0\sum_{j\in J}p_{i_{0}j}q_{ji}=0だが,そのためにはqj0i=0q_{j_{0}i}=0でなければならない.すなわち,QQの行ベクトル(qj0i)iI(q_{j_{0}i})_{i\in I}は,i0i_{0}成分を除いて0である.一方で,QQは正則だから,この性質を満たすQQの行ベクトルはたかだか一つである.以上より,任意のi0Ii_{0}\in Iに対して,pi0j0>0p_{i_{0}j_{0}}>0を満たすj0Jj_{0}\in Jはたかだか一つである.このこととPPの正則性より,全単射ϕ:IJ\phi\colon I\to Jが存在して,

pij{>0(j=ϕ(i))=0(それ以外)p_{ij}\begin{cases}>0&(j=\phi(i))\\ =0&(\text{それ以外})\end{cases}

となる.すなわち,主張が成り立つ.∎

命題2.17

Δ\Deltaをルート系とし,Π\Piをその基底とする.各αΠ\alpha\in\Piに対して

αindiv={α(2αΔ)(2α)=α/2(2αΔ)\alpha^{\vee}_{\mathrm{indiv}}=\begin{cases}\alpha^{\vee}&(2\alpha\notin\Delta% )\\ (2\alpha)^{\vee}=\alpha^{\vee}/2&(2\alpha\in\Delta)\end{cases}

と定めると,Πindiv={αindivαΠ}\Pi^{\vee}_{\mathrm{indiv}}=\{\alpha^{\vee}_{\mathrm{indiv}}\mid\alpha\in\Pi\}は双対ルート系Δ\Delta^{\vee}の基底である.特に,Δ\Deltaが被約ならば,Π={ααΠ}\Pi^{\vee}=\{\alpha^{\vee}\mid\alpha\in\Pi\}は双対ルート系Δ\Delta^{\vee}の基底である.

証明

一般性を失わず,𝕂=\mathbb{K}=\mathbb{R}であり,VV𝐖(Δ)\mathbf{W}(\Delta)不変な内積,\langle\blank,\blank\rangleが定まっていると仮定する(命題1.7系1.8).内積が定める線型同型によって,VVVV^{*}を同一視する.すると,各ルートαR\alpha\in Rに対して,sα=sαs_{\alpha}=s_{\alpha^{\vee}}だから(命題1.13 (4)),sαs_{\alpha}の鏡映面とsαs_{\alpha^{\vee}}の鏡映面は等しい.したがって,Δ\Delta^{\vee}の基底Π\Pi^{\prime}であって,C(Π)=C(Π)C(\Pi)=C(\Pi^{\prime})定理2.5の記号を用いた)を満たすものが存在する.VVの内積に関するΠ\Pi, Π\Pi^{\prime}の双対基底をそれぞれΠ\Pi^{*}, Π\Pi^{\prime}{}^{*}と書くと,C(Π)=C(Π)C(\Pi)=C(\Pi^{\prime})span0Π=span0Π\operatorname{span}_{\mathbb{R}_{\geq 0}}\Pi^{*}=\operatorname{span}_{\mathbb{% R}_{\geq 0}}\Pi^{\prime}{}^{*}を意味するから,補題2.16より,Π\Pi^{\prime}{}^{*}Π\Pi^{*}の各元を適当に正のスカラー倍して得られる集合である.したがって,Π\PiΠ\Pi^{\prime}についても同様である.ところが,各ルートαΔ\alpha\in\Deltaに対して,Δ\Delta^{\vee}のルートのうちα\alphaの正のスカラー倍として書けるものは,α=2α/α,α\alpha^{\vee}=2\alpha/\langle\alpha,\alpha\rangle(2α)=α/2(2\alpha)^{\vee}=\alpha^{\vee}/22αΔ2\alpha\in\Deltaのとき),(α/2)=2α(\alpha/2)^{\vee}=2\alpha^{\vee}α/2Δ\alpha/2\in\Deltaのとき)のみである(系1.25).このうち,Δ\Delta^{\vee}の割れないルートであるものは,2αΔ2\alpha\notin\Deltaならばα\alpha^{\vee}のみであり,2αΔ2\alpha\in\Deltaならば(2α)(2\alpha)^{\vee}のみである.よって,Πindiv=Π\Pi^{\vee}_{\mathrm{indiv}}=\Pi^{\prime}であり,これは双対ルート系Δ\Delta^{\vee}の基底である.

Δ\Deltaが被約ならば,任意のαΔ\alpha\in\Deltaに対してαindiv=α\alpha^{\vee}_{\mathrm{indiv}}=\alpha^{\vee}だから,Π={ααΠ}\Pi^{\vee}=\{\alpha^{\vee}\mid\alpha\in\Pi\}は双対ルート系Δ\Delta^{\vee}の基底である.∎

2.5 正ルート全体のなす集合の特徴付け

命題2.18

Δ\Deltaをルート系とする.部分集合PΔP\subseteq\Deltaに対して,次の条件は同値である.

  1. (a)

    Δ\Deltaの基底Π\Piであって,P=Δ+(Π)P=\Delta_{+}(\Pi)を満たすものが存在する.

  2. (b)

    α\alpha, βP\beta\in Pかつα+βΔ\alpha+\beta\in\Deltaならばα+βP\alpha+\beta\in Pであり,PPP-PΔ\Deltaの分割を与える.

さらに,これらの条件の下で,条件(a)の基底Π\Piは一意に定まり,

Π={αPαPの重複を許す二つ以上の元の和としては書けない}\Pi=\{\alpha\in P\mid\text{$\alpha$は$P$の重複を許す二つ以上の元の和としては書けない}\mbox{}\}

によって与えられる.

証明

(a)(b)\text{(a)}\Longrightarrow\text{(b)} 基底の定義から明らかである.

(b)(a)\text{(b)}\Longrightarrow\text{(a)} 基底Π\Piを,#(PΔ+(Π))\#(P\cap\Delta_{+}(\Pi))が最大となるようにとる.αΠ\alpha\in\PiPPに属さないと仮定すると,sα(α)=αs_{\alpha}(\alpha)=-\alphaPΔ+(sα(Π))P\cap\Delta_{+}(s_{\alpha}(\Pi))に属する.次に,βPΔ+(Π)\beta\in P\cap\Delta_{+}(\Pi)を任意にとる.α\alphaは割れないルートだからβα/2\beta\neq\alpha/2であり,またβ=2α\beta=2\alphaとするとα-\alpha, 2αP2\alpha\in Pよりα=2ααP\alpha=2\alpha-\alpha\in Pとなって仮定に反するから,β𝕂α\beta\notin\mathbb{K}\alphaである(系1.25).したがって,補題2.7よりsα(β)Δ+(Π)s_{\alpha}(\beta)\in\Delta_{+}(\Pi)だから,βPΔ+(sα(Π))\beta\in P\cap\Delta_{+}(s_{\alpha}(\Pi))である.以上より,#(PΔ+(sα(Π)))>#(PΔ+(Π))\#(P\cap\Delta_{+}(s_{\alpha}(\Pi)))>\#(P\cap\Delta_{+}(\Pi))となるが,これはΠ\Piのとり方に反する.よって,背理法より,ΠP\Pi\subseteq Pである.

ΠP\Pi\subseteq PよりΔ+(Π)P\Delta_{+}(\Pi)\subseteq Pだが,Δ+(Π)\Delta_{+}(\Pi)Δ(Π)\Delta_{-}(\Pi)PPP-PはともにΔ\Deltaの分割を与えるから,Δ+(Π)=P\Delta_{+}(\Pi)=Pが成り立つ.これで,主張が示された.

最後の主張 基底の定義から明らかである. ∎

加法群AA上の半順序\leq平行移動不変であるとは,任意のaa, bb, cAc\in Aに対して,aba\leq bならばa+cb+ca+c\leq b+cであることをいう.容易に確かめられるように,平行移動不変な半順序\leqについて,aa, b0b\geq 0ならばa+b0a+b\geq 0であり,また,a0a\geq 0a0-a\leq 0とは同値である.

系2.19

Δ\Deltaを有限次元ベクトル空間VV上のルート系とする.\leqVV上の平行移動不変な全順序とすると,Δ\Deltaの基底Π\Piであって,Δ+(Π)={αΔα0}\Delta_{+}(\Pi)=\{\alpha\in\Delta\mid\alpha\geq 0\}を満たすものが一意に存在する.

証明

上記の注意と命題2.18から従う.∎