Lie代数
を考え,
と置くと,はの基底である.これを,の標準基底(standard basis)という.これらの元, , は,関係式
を満たす.
本節では,特に断らなくても,の標準基底を記号で表す.
2.1 加群のウェイト
定義2.1 (ウェイト)
を加群とする.のへの作用の固有値,固有ベクトル,固有空間を,それぞれ,のウェイト(weight),ウェイトベクトル(weight vector),ウェイト空間(weight space)という.のへの作用における固有値の重複度を,におけるウェイトの重複度(multiplicity)という.
定義2.2 (ウェイト加群)
加群は,それがウェイト空間の直和に分解される(すなわち,のへの作用が対角化可能である)とき,ウェイト加群(weight module)であるという.
命題2.3
を加群とする.がウェイトのウェイトベクトルならば,はウェイトのウェイトベクトルであり,はウェイトのウェイトベクトルである.
証明
がウェイトのウェイトベクトルであるとすると,だから,
である.すなわち,はウェイトのウェイトベクトルであり,はウェイトのウェイトベクトルである.∎
命題2.4
を加群の間の準同型とする.がウェイトのウェイトベクトルならば,はウェイトのウェイトベクトルである.
証明
がウェイトのウェイトベクトルであるとすると,だから,
である.すなわち,はウェイトのウェイトベクトルである.∎
2.2 最高ウェイト加群
定義2.5 (極大ベクトル)
加群のウェイトベクトルであってを満たすものを,の極大ベクトル(maximal vector)という.の極大ベクトルであってを加群として生成するものを,の極大生成ベクトル(maximal generating vector)という.
定義2.6 (最高ウェイト加群)
加群がウェイトの極大生成ベクトルをもつとき,は最高ウェイトの最高ウェイト加群(highest weight module of highest weight )であるという.
命題2.7
を標数の可換体とする.をウェイトの極大ベクトルをもつ加群とし,に対して
と定める.
-
(1)
任意のに対して,
が成り立つ.ただし,とみなす.
以下では,さらに,がの極大生成ベクトルである(したがって,は最高ウェイトの最高ウェイト加群である)とする.
-
(2)
任意のに対してであるとする.このとき,はの基底である.
-
(3)
あるに対してであるとして,と置く.このとき,はの基底であり,である.
証明
(1) の作用に関する主張は命題2.3から従い,の作用に関する主張はの定義から明らかである.の作用に関する主張を,に関する帰納法で示す.のとき,は極大ベクトルだからである.とし,が成り立つとすると,
となり,が成り立つ.これで,帰納法が完成した.
(2) (1)より,はの部分加群である.はを加群として生成するから,である.また,仮定よりはいずれもでなく,(1)よりすべて異なるウェイトのウェイトベクトルだから,は線型独立である.よって,はの基底である.
(3) がの基底であることは,(2)と同様にして示せる.また,かつであり,一方で(1)よりだから,が成り立つ. ∎
最高ウェイトの最高ウェイト加群は,もし存在すれば,その構造は命題2.7によって決まってしまう.分類を完成させるために,与えられた最高ウェイトの最高ウェイト加群を具体的に構成する.
に対して,ベクトル空間としてはと定め(その標準基底をと書く),, , のへの線型作用を
によって定める(ただし,とみなす).これらの作用を標準基底に関して行列表示すれば,
となる.容易に確かめられるように,これらの作用によって,は加群をなす.明らかに,はのウェイトの極大生成ベクトルである.
さらに,であるとする.このとき,においてだから,
と定めると,これはの部分加群である.これを用いて
と定め,からへの等化準同型による各の像をそのままと書く.明らかに,はを基底にもつ次元の加群であり,はのウェイトの極大生成ベクトルである., , のへの作用を基底に関して行列表示すれば,
となる.
定理2.8 (最高ウェイト加群の分類)
を標数の可換体とする.とする.
-
(1)
であるとする.このとき,最高ウェイトの最高ウェイト加群は,同型を除いてのみである.は無限次元かつ既約なウェイト加群であり,そのウェイトは, , , (すべて重複度)である.
-
(2)
であるとする.このとき,最高ウェイトの最高ウェイト加群は,同型を除いてとのみである.は無限次元かつ可約なウェイト加群であり,そのウェイトは, , , (すべて重複度)である.は次元かつ既約なウェイト加群であり,そのウェイトは, , , , (すべて重複度)である.
証明
最高ウェイト加群の分類に関する主張は,命題2.7から従う.次元とウェイトに関する主張は,明らかである.
既約性に関する主張を示す.まず,であるとすると,は,部分加群, をもつから,可約である.次に,であるとして,の部分加群を任意にとる.を一つ固定して(,)と表すと,命題2.7より
である.これは,よりのでないスカラー倍であり,に属する.はを加群として生成するから,となる.よって,は既約である.である場合にが既約であることも,同様にして示せる.∎
系2.9
を標数の可換体とする.をウェイトの極大ベクトルをもつ加群とし,が生成するの部分をと置く.が有限次元ならば,である.
証明
はの極大生成ベクトルだから,主張は,最高ウェイト加群の分類(定理2.8)から従う.∎
2.3 有限次元既約加群
補題2.10
証明
(1) だから,に対して,
である.
(2) であることと(1)より,に対して,
である.また,(1)よりだから,
である. ∎
命題2.11
を標数の可換体とする.でない有限次元加群は,極大ベクトルをもつ.
証明
定理2.12 (有限次元既約加群の分類)
を標数の可換体とする.有限次元既約加群は,に対するで同型を除いて尽くされる.は次元のウェイト加群であり,そのウェイトは, , , , (すべて重複度)である.
系2.13
を標数の可換体とする.を有限次元加群とし,それにおけるウェイトの重複度をと書く.
-
(1)
はウェイト加群であり,そのウェイトはすべて整数である.
-
(2)
任意のに対して,である.
-
(3)
かつである.
-
(4)
は完全可約である.さらに,()のにおける重複度は,である.
証明
Weylの完全可約性定理よりは完全可約だから,主張は,が有限次元既約加群である場合に示せば十分である.この場合の主張は,いずれも,有限次元既約加群の分類(定理2.12)から容易に確かめられる.∎
系2.14
証明
Weylの完全可約性定理よりは完全可約だから,主張は,が有限次元既約加群である場合に示せば十分である.この場合の主張は,いずれも,有限次元既約加群の分類(定理2.12)から容易に確かめられる.∎