UNIT:コンパクトLie群@

2 極大トーラス

2.1 連結可換Lie群

命題2.1

TTを連結可換Lie群とし,𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.

  1. (1)

    (𝔱,expT)(\mathfrak{t},\exp_{T})TTの普遍被覆Lie群であり,この被覆準同型の核Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}の離散部分群である.

  2. (2)

    TTがコンパクトである(すなわち,トーラス(定義2.7)である)とする.このとき,Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}上の格子である.

証明

(1) 指数写像expT\exp_{T}は,点0𝔱0\in\mathfrak{t}において局所微分同相であり,TTが可換であることより準同型である.したがって,expT\exp_{T}はLie群の被覆準同型であり,その核Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}の離散部分群である.さらに,𝔱\mathfrak{t}は単連結でありTTは連結だから,(𝔱,expT)(\mathfrak{t},\exp_{T})TTの普遍被覆Lie群である.

(2) (1)よりKer(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}の離散部分群であり,𝔱/Ker(expT)T\mathfrak{t}/\mathord{\operatorname{Ker}(\exp_{T})}\cong Tはコンパクトだから,Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}上の格子である. ∎

2.2 Cartan部分群

命題2.2

GGをコンパクトなLie代数をもつLie群,TTをその連結部分Lie群とし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.次の条件は同値である.

  1. (a)

    TTGGの連結閉可換部分Lie群の中で極大である.

  2. (b)

    TTGGの連結可換部分Lie群の中で極大である.

  3. (c)

    𝔱\mathfrak{t}𝔤\mathfrak{g}の極大可換部分空間である.

  4. (d)

    𝔱\mathfrak{t}𝔤\mathfrak{g}のCartan部分代数である.

証明

(a)(b)\text{(a)}\Longleftrightarrow\text{(b)} GGの連結可換部分Lie群の閉包はまた連結可換部分Lie群だから(閉部分群定理を用いた),TTが連結可換部分Lie群の中で極大ならばTTは閉である.よって,TTGGの連結閉可換部分Lie群の中で極大であることと,連結可換部分Lie群の中で極大であることとは同値である.

(b)(c)\text{(b)}\Longleftrightarrow\text{(c)} GGの連結可換部分Lie群と𝔤\mathfrak{g}の可換部分空間とは,Lie代数をとる操作によって一対一に対応し,この対応は包含関係を保つ.よって,TTGGの連結可換部分Lie群の中で極大であることと,𝔱\mathfrak{t}𝔤\mathfrak{g}の極大可換部分空間であることとは同値である.

(c)(d)\text{(c)}\Longleftrightarrow\text{(d)} 系1.6ですでに示した. ∎

定義2.3 (Cartan部分群)

コンパクトなLie代数をもつLie群GG連結Cartan部分群(connected Cartan subgroup)とは,連結部分Lie群TGT\subseteq Gであって命題2.2の同値な条件を満たすものをいう.GGが連結である場合には,その連結Cartan部分群を単にCartan部分群(Cartan subgroup)という.

命題2.4 (Cartan部分群の存在と共役性)

コンパクトなLie代数をもつLie群GGは,共役を除いて一意な連結Cartan部分群をもつ.

証明

コンパクトLie代数𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)は,Ad(G)\operatorname{Ad}(G)の下の共役を除いて一意なCartan部分代数をもつ(定理1.10注意1.11).よって,主張は,命題2.2の条件(d)から従う.∎

命題2.5

GGをコンパクトなLie代数をもつLie群とする.GGの任意の連結可換部分Lie群SSに対して,それを含むGGの連結Cartan部分群が存在する.

証明

Lie(S)\operatorname{Lie}(S)Lie(G)\operatorname{Lie}(G)の可換部分Lie代数だから,それを含む極大可換部分空間𝔱Lie(G)\mathfrak{t}\subseteq\operatorname{Lie}(G)がとれる.GGの連結部分Lie群であって𝔱\mathfrak{t}をLie代数にもつものをTTと置くと,TTGGのCartan部分群であり(命題2.2の条件(c)),SSを含む.∎

命題2.6

GGをコンパクトなLie代数をもつLie群とし,TTGGの連結Cartan部分群とする.このとき,G=G0𝐍G(T)=𝐍G(T)G0G=G_{0}\mathbf{N}_{G}(T)=\mathbf{N}_{G}(T)G_{0}である.

証明

gGg\in Gを任意にとる.TTgTg1gTg^{-1}はともにG0G_{0}の連結Cartan部分群だから,連結Cartan部分群の共役性(命題2.4)より,あるg0G0g_{0}\in G_{0}が存在してg0gTg1g01=Tg_{0}gTg^{-1}g_{0}^{-1}=Tとなる.このとき,g0g𝐍G(T)g_{0}g\in\mathbf{N}_{G}(T)だから,g=g01(g0g)G0𝐍G(T)g=g_{0}^{-1}(g_{0}g)\in G_{0}\mathbf{N}_{G}(T)である.よって,G=G0𝐍G(T)G=G_{0}\mathbf{N}_{G}(T)であり,逆元をとる写像を考えれば,G=𝐍G(T)G0G=\mathbf{N}_{G}(T)G_{0}も得られる.∎

2.3 極大トーラスの性質

定義2.7 (トーラス)

コンパクト連結可換Lie群を,トーラス(torus)という.

定義2.8 (極大トーラス)

Lie群GGトーラス(torus)とは,その部分Lie群であってトーラスであるものをいう.GGのトーラスの中で極大なものを,GG極大トーラス(maximal torus)という.

コンパクトLie群のトーラスとは,その連結閉可換部分Lie群のことにほかならない.したがって,コンパクトLie群の極大トーラスとは,その連結Cartan部分群のことにほかならない(命題2.2の条件(a)).

補題2.9

GGをコンパクトLie群とし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)と置く.このとき,Ad𝔤(G)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(G)の任意の元は,半単純である.

証明

Ad𝔤(G)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(G)はコンパクトだから,𝔤\mathfrak{g}上のAd𝔤(G)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(G)不変な内積がとれる.Ad𝔤(G)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(G)の任意の元は,この内積に関する直交変換だから,半単純である.∎

補題2.10

GGをコンパクトLie群とする.写像ϕ:G×GG\phi\colon G\times G\to Gを,ϕ(g,t)=gtg1\phi(g,t)=gtg^{-1}と定める.このとき,任意の点tGt\in Gに対して,ϕ(G×t𝐙G(t)0)\phi(G\times t\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})ttの近傍である.

証明

𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)と置く.ϕ\phiの点(e,t)(e,t)における微分dϕ(e,t):𝔤×t𝔤t𝔤d\phi_{(e,t)}\colon\mathfrak{g}\times t\mathfrak{g}\to t\mathfrak{g}

dϕ(e,t)(x,0)=ddr|r=0erxterx=ddr|r=0terAd𝔤(t1)xerx=t(Ad𝔤(t1)xx),\displaystyle d\phi_{(e,t)}(x,0)=\frac{d}{{dr}}|_{r=0}e^{rx}te^{-rx}=\frac{d}{% {dr}}|_{r=0}te^{r\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})x}e^{-rx}=t(% \operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})x-x),
dϕ(e,t)(0,ty)=ddr|r=0tety=ty\displaystyle d\phi_{(e,t)}(0,ty)=\frac{d}{{dr}}|_{r=0}te^{ty}=ty

で与えられるから,

dϕ(e,t)(𝔤×t𝐙𝔤(t))=t((Ad𝔤(t1)id𝔤)(𝔤)+𝐙𝔤(t))d\phi_{(e,t)}(\mathfrak{g}\times t\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t))=t((% \operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})-\mathrm{id}_{\mathfrak{g}})(\mathfrak% {g})+\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t))

である.ここで,Ad𝔤(t1)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})は半単純だから(補題2.9),𝔤()\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}Ad𝔤()(t1)\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}(t^{-1})の固有空間に直和分解される.(Ad𝔤(t1)id𝔤)(𝔤)(\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})-\mathrm{id}_{\mathfrak{g}})(% \mathfrak{g})の複素化は11以外の固有値の固有空間の直和に等しく,𝐙𝔤(t)\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t)の複素化は固有値11の固有空間に等しいから,これらの和は𝔤()\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}全体となる.したがって,(Ad𝔤(t1)id𝔤)(𝔤)+𝐙𝔤(t)=𝔤(\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}}(t^{-1})-\mathrm{id}_{\mathfrak{g}})(% \mathfrak{g})+\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t)=\mathfrak{g}である.よって,dϕ(e,t)(𝔤×t𝐙𝔤(t))=t𝔤d\phi_{(e,t)}(\mathfrak{g}\times t\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t))=t\mathfrak{g}だから,ϕ(G×t𝐙G(t)0)\phi(G\times t\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})ttの近傍である.∎

定理2.11

GGをコンパクト連結Lie群とし,TTをその極大トーラスとする.このとき,GGの任意の元は,TTのある元に共役である.

証明

写像ϕ:G×GG\phi\colon G\times G\to Gを,ϕ(g,t)=gtg1\phi(g,t)=gtg^{-1}と定める.GGTTはコンパクトだから,ϕ(G×T)\phi(G\times T)はコンパクトであり,したがって,GGにおいて閉である.あとは,ϕ(G×T)\phi(G\times T)GGにおいて開であることを示せば,ϕ(G×T)=G\phi(G\times T)=Gであることがわかる.ϕ(G×T)\phi(G\times T)GGの共役による作用に関して安定だから,ϕ(G×T)\phi(G\times T)GGにおいて開であることを示すためには,ϕ(G×T)\phi(G\times T)が任意の点tTt\in Tの近傍であることを示せば十分である.このことを,GGの次元に関する帰納法で示す.𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)と置く.

まず,t𝐙(G)t\in\mathbf{Z}(G)である場合を考える.任意のx𝔤x\in\mathfrak{g}𝔤\mathfrak{g}のある極大可換部分空間𝔱\mathfrak{t}^{\prime}に含まれ,これをLie代数にもつGGの連結部分Lie群をTT^{\prime}と書くと,exTe^{x}\in T^{\prime}である.TT^{\prime}GGの極大トーラスだから,あるgGg\in Gが存在してgexg1gTg1=Tge^{x}g^{-1}\in gT^{\prime}g^{-1}=Tとなる(命題2.4).このggについて,t𝐙(G)t\in\mathbf{Z}(G)よりtex=g1tgexg1g=ϕ(g1,tgexg1)ϕ(G×T)te^{x}=g^{-1}tge^{x}g^{-1}g=\phi(g^{-1},tge^{x}g^{-1})\in\phi(G\times T)が成り立つ.よって,texp(𝔤)ϕ(G×T)t\exp(\mathfrak{g})\subseteq\phi(G\times T)だから,ϕ(G×T)\phi(G\times T)ttの近傍である.

次に,t𝐙(G)t\notin\mathbf{Z}(G)である場合を考える.𝐙G(t)\mathbf{Z}_{G}(t)の主連結成分𝐙G(t)0\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}は,コンパクト連結Lie群である.T𝐙G(t)T\subseteq\mathbf{Z}_{G}(t)であり,TTは連結だから,T𝐙G(t)0T\subseteq\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}である.TTGGの極大トーラスだから,𝐙G(t)0\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}の極大トーラスでもある.また,t𝐙(G)t\notin\mathbf{Z}(G)よりLie(𝐙G(t)0)=𝐙𝔤(t)𝔤\operatorname{Lie}(\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})=\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(t)% \subsetneq\mathfrak{g}だから,dim𝐙G(t)0<dimG\dim\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}<\dim Gである.したがって,帰納法の仮定より

𝐙G(t)0=ϕ(𝐙G(t)0×T)ϕ(G×T)\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}=\phi(\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}\times T)\subseteq\phi(G\times T)

だから,

ϕ(G×𝐙G(t)0)=ϕ(G×T)\phi(G\times\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})=\phi(G\times T)

を得る.一方で,補題2.10より,ϕ(G×𝐙G(t)0)=ϕ(G×t𝐙G(t)0)\phi(G\times\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})=\phi(G\times t\mathbf{Z}_{G}(t)_{0})tT𝐙G(t)0t\in T\subseteq\mathbf{Z}_{G}(t)_{0}であることを用いた)はttの近傍である.よって,ϕ(G×T)\phi(G\times T)ttの近傍である.これで,帰納法が完成した.∎

系2.12

コンパクト連結Lie群GGの指数写像は,全射である.

証明

定理2.11より,GGはその極大トーラス全体の合併に等しい.トーラスの指数写像は全射だから(命題2.1 (1)),GGの指数写像も全射である.∎

系2.13

コンパクト連結Lie群GGのすべての極大トーラスの交叉は,中心𝐙(G)\mathbf{Z}(G)に等しい.

証明

定理2.11よりGGはその極大トーラス全体の合併に等しいから,zGz\in GGGのすべての極大トーラスに含まれるとすると,z𝐙(G)z\in\mathbf{Z}(G)である.一方で,TTGGの極大トーラスとすると,定理2.11より,任意のz𝐙(G)z\in\mathbf{Z}(G)に対してあるgGg\in Gが存在してz=gzg1Tz=gzg^{-1}\in Tとなる.よって,GGのすべての極大トーラスの交叉は,中心𝐙(G)\mathbf{Z}(G)に等しい.∎

系2.14

GGをコンパクト連結Lie群とし,SSをその連結可換部分Lie群とする.このとき,中心化子𝐙G(S)\mathbf{Z}_{G}(S)は,GGの極大トーラスであってSSを含むもの全体の合併に等しい.

証明

任意のg𝐙G(S)g\in\mathbf{Z}_{G}(S)に対して,GGの極大トーラスであってggSSを含むものが存在することを示せばよい.𝐙G(g)\mathbf{Z}_{G}(g)の主連結成分𝐙G(g)0\mathbf{Z}_{G}(g)_{0}は,コンパクト連結Lie群である.S𝐙G(g)S\subseteq\mathbf{Z}_{G}(g)であり,SSは連結だから,S𝐙G(g)0S\subseteq\mathbf{Z}_{G}(g)_{0}である.また,定理2.11よりGGの極大トーラスであってggを含むものが存在するから,g𝐙G(g)0g\in\mathbf{Z}_{G}(g)_{0}である.𝐙G(g)0\mathbf{Z}_{G}(g)_{0}の極大トーラスTTであってSSを含むものをとると(命題2.5),系2.13よりg𝐙(𝐙G(g)0)Tg\in\mathbf{Z}(\mathbf{Z}_{G}(g)_{0})\subseteq Tである.ggを含むトーラスは必ず𝐙G(g)0\mathbf{Z}_{G}(g)_{0}に含まれるから,TTGGの極大トーラスでもある.これで,主張が示された.∎

系2.15

GGをコンパクト連結Lie群とする.

  1. (1)

    GGの連結可換部分Lie群SSに対して,中心化子𝐙G(S)\mathbf{Z}_{G}(S)は連結である.

  2. (2)

    GGの極大トーラスTTに対して,中心化子𝐙G(T)\mathbf{Z}_{G}(T)TTに等しい.特に,TTGGにおいて極大可換である.

証明

系2.14から従う.∎

系2.16

GGをコンパクト連結Lie群とし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)と置く.𝔞\mathfrak{a}𝔤\mathfrak{g}の部分集合とし,𝔞\mathfrak{a}の任意の二つの元は可換であるとする.このとき,𝐙G(𝔞)\mathbf{Z}_{G}(\mathfrak{a})は連結である.

証明

仮定より,span𝔞\operatorname{span}_{\mathbb{R}}\mathfrak{a}𝔤\mathfrak{g}の可換部分Lie代数である.これをLie代数にもつGGの連結部分Lie群をAAと置くと,𝐙G(𝔞)=𝐙G(span𝔞)=𝐙G(A)\mathbf{Z}_{G}(\mathfrak{a})=\mathbf{Z}_{G}(\operatorname{span}_{\mathbb{R}}% \mathfrak{a})=\mathbf{Z}_{G}(A)だから,主張は系2.15 (1)から従う.∎

本小節で述べたコンパクト連結Lie群に関する結果は,コンパクトなLie代数をもつ連結Lie群のCartan部分群にまで拡張できる.3.2節を参照のこと.

2.4 ルート格子と整ベクトルのなす加法群

𝔤\mathfrak{g}をコンパクトLie代数,𝔱\mathfrak{t}をそのCartan部分代数とし,Δ=Δ(𝔤(),𝔱())\Delta=\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})(𝔱())u={λ(𝔱())λ(𝔱)i}(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})^{*}\mid\lambda(\mathfrak{t})\subseteq i\mathbb{R}\}(これは自然にi𝔱i\mathfrak{t}^{*}と同一視される)と置く.本稿の以下の部分では,次の記号を用いる.

  • Q(Δ)Q(\Delta)で,ルート格子Δ\mathbb{Z}\Deltaを表す.

  • P(Δ)P(\Delta)で,Δ\Deltaに関する整ベクトルのうち(𝔱())u(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}に属するもの全体のなす加法群を表す.すなわち,

    P(Δ)={λ(𝔱())u任意のαΔに対してλ(Hα)}P(\Delta)=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}\mid\text{% 任意の$\alpha\in\Delta$に対して$\lambda(H_{\alpha})\in\mathbb{Z}$}\}

    である.

  • Q(2πiΔ)Q(2\pi i\Delta^{\vee})で,ルート格子(2πiΔ)=span{2πiHααΔ}\mathbb{Z}(2\pi i\Delta^{\vee})=\operatorname{span}_{\mathbb{Z}}\{2\pi iH_{% \alpha}\mid\alpha\in\Delta\}を表す.

  • P(2πiΔ)P(2\pi i\Delta^{\vee})で,2πiΔ2\pi i\Delta^{\vee}に関する整ベクトルのうち𝔱\mathfrak{t}に属するもの全体のなす加法群を表す.すなわち,

    P(2πiΔ)={h𝔱任意のαΔに対してα(h)2πi}P(2\pi i\Delta^{\vee})=\{h\in\mathfrak{t}\mid\text{任意の$\alpha\in\Delta$に対して$% \alpha(h)\in 2\pi i\mathbb{Z}$}\}

    である.

補題2.17

VVVV^{\prime}を有限次元実ベクトル空間とし,,:V×V\langle\blank,\blank\rangle\colon V^{\prime}\times V\to\mathbb{R}を非退化双線型形式とする.Γ\GammaVVの閉部分群とし,

Γ={vVv,Γ}\Gamma^{\vee}=\{v^{\prime}\in V^{\prime}\mid\langle v^{\prime},\Gamma\rangle% \subseteq\mathbb{Z}\}

と置くと,

Γ={vVΓ,v}\Gamma=\{v\in V\mid\langle\Gamma^{\vee},v\rangle\subseteq\mathbb{Z}\}

が成り立つ.

証明

有限次元実ベクトル空間の閉部分群の分類定理より,VVの基底(e1,,en)(e_{1},\dots,e_{n})kk, ll\in\mathbb{N}k+lnk+l\leq n)が存在して,Γ=e1ekek+1ek+l\Gamma=\mathbb{R}e_{1}\oplus\dots\mathbb{R}e_{k}\oplus\mathbb{Z}e_{k+1}\oplus% \dots\oplus\mathbb{Z}e_{k+l}と書ける.非退化双線型形式,\langle\blank,\blank\rangleに関する(e1,,en)(e_{1},\dots,e_{n})の双対基底を(e1,,en)(e^{\prime}_{1},\dots,e^{\prime}_{n})と書くと,

Γ=ek+1ek+lek+l+1en\Gamma^{\vee}=\mathbb{Z}e^{\prime}_{k+1}\oplus\dots\oplus\mathbb{Z}e^{\prime}_% {k+l}\oplus\mathbb{R}e^{\prime}_{k+l+1}\oplus\dots\oplus\mathbb{R}e^{\prime}_{n}

である.示すべき等式の右辺をΓ\Gamma^{\vee\vee}と置くと,

Γ=e1ekek+1ek+l=Γ\Gamma^{\vee\vee}=\mathbb{R}e_{1}\oplus\dots\mathbb{R}e_{k}\oplus\mathbb{Z}e_{% k+1}\oplus\dots\oplus\mathbb{Z}e_{k+l}=\Gamma

となり,主張が成り立つ.∎

命題2.18

𝔤\mathfrak{g}をコンパクトLie代数,𝔱\mathfrak{t}をそのCartan部分代数とし,Δ=Δ(𝔤(),𝔱())\Delta=\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})(𝔱())u={λ(𝔱())λ(𝔱)i}(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})^{*}\mid\lambda(\mathfrak{t})\subseteq i\mathbb{R}\}と置く.λ(𝔱())u\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}h𝔱h\in\mathfrak{t}に対して,λ,h=(2πi)1λ(h)\langle\lambda,h\rangle=(2\pi i)^{-1}\lambda(h)と定める.このとき,

Q(Δ)\displaystyle Q(\Delta) ={λ(𝔱())uλ,P(2πiΔ)},\displaystyle=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}\mid% \langle\lambda,P(2\pi i\Delta^{\vee})\rangle\subseteq\mathbb{Z}\}, Q(2πiΔ)\displaystyle\qquad Q(2\pi i\Delta^{\vee}) ={h𝔱P(Δ),h},\displaystyle=\{h\in\mathfrak{t}\mid\langle P(\Delta),h\rangle\subseteq\mathbb% {Z}\},
P(Δ)\displaystyle P(\Delta) ={λ(𝔱())uλ,Q(2πiΔ)},\displaystyle=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}\mid% \langle\lambda,Q(2\pi i\Delta^{\vee})\rangle\subseteq\mathbb{Z}\}, P(2πiΔ)\displaystyle\qquad P(2\pi i\Delta^{\vee}) ={h𝔱Q(Δ),h}\displaystyle=\{h\in\mathfrak{t}\mid\langle Q(\Delta),h\rangle\subseteq\mathbb% {Z}\}

である.

証明

P(Δ)P(\Delta)P(2πiΔ)P(2\pi i\Delta^{\vee})に関する等式は,これらの定義からただちに従う.また,これらの等式と補題2.17から,それぞれQ(2πiΔ)Q(2\pi i\Delta^{\vee})Q(Δ)Q(\Delta)に関する等式が従う.∎

2.5 加法群X(T)X(T)

定義2.19

TTを連結可換Lie群とし,𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.X(T)X(T)X(T)X_{\mathbb{C}}(T)を,

X(T)\displaystyle X(T) ={λ(𝔱())λ|𝔱の持ち上げχ:TU(1)が存在する},\displaystyle=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}\mid\text{$\lambda|% _{\mathfrak{t}}$の持ち上げ$\chi\colon T\to U(1)$が存在する}\mbox{}\},
X(T)\displaystyle X_{\mathbb{C}}(T) ={λ(𝔱())λ|𝔱の持ち上げχ:T×が存在する}\displaystyle=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}\mid\text{$\lambda|% _{\mathfrak{t}}$の持ち上げ$\chi\colon T\to\mathbb{C}^{\times}$が存在する}\mbox{}\}

と定める.

注意2.20

TTを連結可換Lie群とし,𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.

  1. (1)

    TT上の定数関数110の持ち上げである.また,λ1\lambda_{1}, λ2(𝔱())\lambda_{2}\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})とし,χ1\chi_{1}, χ2:T×\chi_{2}\colon T\to\mathbb{C}^{\times}(あるいはU(1)U(1))がそれぞれλ1|𝔱\lambda_{1}|_{\mathfrak{t}}, λ2|𝔱\lambda_{2}|_{\mathfrak{t}}の持ち上げであるとすると,χ1χ2\chi_{1}\chi_{2}(λ1+λ2)|𝔱(\lambda_{1}+\lambda_{2})|_{\mathfrak{t}}の持ち上げであり,χ11\chi_{1}^{-1}λ1|𝔱-\lambda_{1}|_{\mathfrak{t}}の持ち上げである.したがって,X(T)X(T)X(T)X_{\mathbb{C}}(T)は,加法に関して(𝔱())(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}の部分群をなす.

  2. (2)

    Lie(U(1))=i\operatorname{Lie}(U(1))=i\mathbb{R}だから,(𝔱())u={λ(𝔱())λ(𝔱)i}(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})^{*}\mid\lambda(\mathfrak{t})\subseteq i\mathbb{R}\}と置くと,X(T)=X(T)(𝔱())uX(T)=X_{\mathbb{C}}(T)\cap(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}である.

命題2.21

TTを連結可換Lie群とし,𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)(𝔱())u={λ(𝔱())λ(𝔱)i}(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})^{*}\mid\lambda(\mathfrak{t})\subseteq i\mathbb{R}\}と置く.λ(𝔱())u\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}h𝔱h\in\mathfrak{t}に対して,λ,h=(2πi)1λ(h)\langle\lambda,h\rangle=(2\pi i)^{-1}\lambda(h)と定める.このとき,

X(T)={λ(𝔱())uλ,Ker(expT)},Ker(expT)={h𝔱X(T),h}X(T)=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}\mid\langle% \lambda,\operatorname{Ker}(\exp_{T})\rangle\subseteq\mathbb{Z}\},\qquad% \operatorname{Ker}(\exp_{T})=\{h\in\mathfrak{t}\mid\langle X(T),h\rangle% \subseteq\mathbb{Z}\}

である.

証明

λ(𝔱())u\lambda\in(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}とする.TT11次元連続表現χ:TU(1)\chi\colon T\to U(1)λ|𝔱\lambda|_{\mathfrak{t}}の持ち上げであるための必要十分条件は,図式

𝔱{\mathfrak{t}}i{i\mathbb{R}}T{T}U(1){U(1)}expT\scriptstyle{\exp_{T}}λ|𝔱\scriptstyle{\lambda|_{\mathfrak{t}}}exp\scriptstyle{\exp}χ\scriptstyle{\chi}

が可換であることである.指数写像expT\exp_{T}はLie群の全射被覆準同型だから(命題2.1 (1)),このようなχ\chiが存在するための必要十分条件は,λ(Ker(expT))2πi\lambda(\operatorname{Ker}(\exp_{T}))\subseteq 2\pi i\mathbb{Z}であることである.よって,X(T)X(T)に関する等式が成り立つ.また,この等式と補題2.17から,Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})に関する等式が従う.∎

系2.22

TTをトーラスとし,𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)(𝔱())u={λ(𝔱())λ(𝔱)i}(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}=\{\lambda\in(\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})^{*}\mid\lambda(\mathfrak{t})\subseteq i\mathbb{R}\}と置く.このとき,X(T)=X(T)X(T)=X_{\mathbb{C}}(T)であり,これらは(𝔱())u(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}上の格子である.

証明

TTはコンパクトだから,連続指標χ:T×\chi\colon T\to\mathbb{C}^{\times}は必ずユニタリである.したがって,X(T)=X(T)X(T)=X_{\mathbb{C}}(T)である.また,Ker(expT)\operatorname{Ker}(\exp_{T})𝔱\mathfrak{t}上の格子だから(命題2.1 (2)),命題2.21より,X(T)X(T)(𝔱())u(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}_{\mathrm{u}}上の格子である.∎

補題2.23

𝔤\mathfrak{g}をコンパクトLie代数とし,𝔱\mathfrak{t}をそのCartan部分代数とする.このとき,各ルートαΔ(𝔤(),𝔱())\alpha\in\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対して,次の条件を満たすxαx_{\alpha}, yαy_{\alpha}, zα𝔤z_{\alpha}\in\mathfrak{g}が存在する.

  1. (i)

    xαx_{\alpha}, yα((𝔤())α(𝔤())α)𝔤y_{\alpha}\in((\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})})_{\alpha}\oplus(\mathfrak{g}_{(% \mathbb{C})})_{-\alpha})\cap\mathfrak{g}かつzα=(i/2)Hα𝔱z_{\alpha}=(i/2)H_{\alpha}\in\mathfrak{t}である.

  2. (ii)

    xαx_{\alpha}, yαy_{\alpha}, zαz_{\alpha}は線型独立である.

  3. (iii)

    [xα,yα]=zα[x_{\alpha},y_{\alpha}]=z_{\alpha}[yα,zα]=xα[y_{\alpha},z_{\alpha}]=x_{\alpha}[zα,xα]=yα[z_{\alpha},x_{\alpha}]=y_{\alpha}である.

さらに,xαx_{\alpha}, yαy_{\alpha}, zαz_{\alpha}がこれらの条件を満たすとき,Lie代数の単射準同型ϕα:𝔰𝔲(2)𝔤\phi_{\alpha}\colon\mathfrak{su}(2)\to\mathfrak{g}であって

ϕ(12(0110))=xα,ϕ(i2(0110))=yα,ϕ(i2(1001))=zα\phi\left(\frac{1}{2}\begin{pmatrix}0&1\\ -1&0\end{pmatrix}\right)=x_{\alpha},\qquad\phi\left(\frac{i}{2}\begin{pmatrix}% 0&1\\ 1&0\end{pmatrix}\right)=y_{\alpha},\qquad\phi\left(\frac{i}{2}\begin{pmatrix}1% &0\\ 0&-1\end{pmatrix}\right)=z_{\alpha}

を満たすものが,一意に存在する.

証明

一般性を失わず,𝔤\mathfrak{g}が半単純であると仮定する.系1.24より,(𝔤,𝔱)(\mathfrak{g},\mathfrak{t})(𝔤(),𝔱())(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対するあるChevalley系(Xα)αΔ(𝔤(),𝔱())(X_{\alpha})_{\alpha\in\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})}に伴うコンパクト実形である.そこで,

xα=12(Xα+Xα),yα=i2(XαXα),zα=i2Hαx_{\alpha}=\frac{1}{2}(X_{\alpha}+X_{-\alpha}),\qquad y_{\alpha}=\frac{i}{2}(X% _{\alpha}-X_{-\alpha}),\qquad z_{\alpha}=\frac{i}{2}H_{\alpha}

と置くと,xαx_{\alpha}, yα𝔤y_{\alpha}\in\mathfrak{g}かつzα𝔱z_{\alpha}\in\mathfrak{t}であり,これらは線型独立であり,

[xα,yα]=i4[Xα+Xα,XαXα]=i2Hα=zα,\displaystyle[x_{\alpha},y_{\alpha}]=\frac{i}{4}[X_{\alpha}+X_{-\alpha},X_{% \alpha}-X_{-\alpha}]=\frac{i}{2}H_{\alpha}=z_{\alpha},
[yα,zα]=14[XαXα,Hα]=12(Xα+Xα)=xα,\displaystyle[y_{\alpha},z_{\alpha}]=-\frac{1}{4}[X_{\alpha}-X_{-\alpha},H_{% \alpha}]=\frac{1}{2}(X_{\alpha}+X_{-\alpha})=x_{\alpha},
[zα,xα]=i4[Hα,Xα+Xα]=i2(XαXα)=yα\displaystyle[z_{\alpha},x_{\alpha}]=\frac{i}{4}[H_{\alpha},X_{\alpha}+X_{-% \alpha}]=\frac{i}{2}(X_{\alpha}-X_{-\alpha})=y_{\alpha}

を満たす.一方で,𝔰𝔲(2)\mathfrak{su}(2)の基底

12(0110),i2(0110),i2(1001)\frac{1}{2}\begin{pmatrix}0&1\\ -1&0\end{pmatrix},\qquad\frac{i}{2}\begin{pmatrix}0&1\\ 1&0\end{pmatrix},\qquad\frac{i}{2}\begin{pmatrix}1&0\\ 0&-1\end{pmatrix}

も同じ交換関係を満たす.よって,主張の条件を満たすLie代数の単射準同型が一意に存在する.∎

命題2.24

GGをコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,TTをそのCartan部分群とし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)Δ=Δ(𝔤(),𝔱())\Delta=\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})と置く.

  1. (1)

    Q(Δ)X(T)P(Δ)Q(\Delta)\subseteq X(T)\subseteq P(\Delta)である.

  2. (2)

    Q(2πiΔ)Ker(expT)P(2πiΔ)Q(2\pi i\Delta^{\vee})\subseteq\operatorname{Ker}(\exp_{T})\subseteq P(2\pi i% \Delta^{\vee})である.

証明

GGの随伴表現のTTへの制限Ad𝔤()|T\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}|_{T}の微分表現は,𝔤()\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}の随伴表現の𝔱\mathfrak{t}への制限ad𝔤()|𝔱\operatorname{ad}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}|_{\mathfrak{t}}であり,h𝔱h\in\mathfrak{t}は各ルート空間(𝔤())α(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})})_{\alpha}α(h)\alpha(h)倍写像として作用する.したがって,Ad𝔤()|T\operatorname{Ad}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}|_{T}は各ルート空間(𝔤())α(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})})_{\alpha}上の11次元部分表現を定め,これがα|𝔱\alpha|_{\mathfrak{t}}の持ち上げとなる.よって,ΔX(T)\Delta\subseteq X(T)だから,Q(Δ)X(T)Q(\Delta)\subseteq X(T)が成り立つ.このことと命題2.18命題2.21より,Ker(expT)P(2πiΔ)\operatorname{Ker}(\exp_{T})\subseteq P(2\pi i\Delta^{\vee})も成り立つ.

補題2.23より,各ルートαΔ(𝔤(),𝔱())\alpha\in\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対して,Lie代数の単射準同型ϕα:𝔰𝔲(2)𝔤\phi_{\alpha}\colon\mathfrak{su}(2)\to\mathfrak{g}であって

ϕα(i(1001))=iHα\phi_{\alpha}\left(i\begin{pmatrix}1&0\\ 0&-1\end{pmatrix}\right)=iH_{\alpha}

を満たすものがとれる.さらに,𝑆𝑈(2)\mathit{SU}(2)𝔰𝔲(2)\mathfrak{su}(2)をLie代数にもつ単連結Lie群だから,ϕα\phi_{\alpha}はLie群の準同型fα:𝑆𝑈(2)Gf_{\alpha}\colon\mathit{SU}(2)\to Gに持ち上がる.したがって,

exp(2πiHα)=exp(ϕα(2πi(1001)))=fα(exp(2πi(1001)))=fα((1001))=1\exp(2\pi iH_{\alpha})=\exp\left(\phi_{\alpha}\left(2\pi i\begin{pmatrix}1&0\\ 0&-1\end{pmatrix}\right)\right)=f_{\alpha}\left(\exp\left(2\pi i\begin{pmatrix% }1&0\\ 0&-1\end{pmatrix}\right)\right)=f_{\alpha}\left(\begin{pmatrix}1&0\\ 0&1\end{pmatrix}\right)=1

であり,2πiHαKer(expT)2\pi iH_{\alpha}\in\operatorname{Ker}(\exp_{T})を得る.よって,Q(2πiΔ)Ker(expT)Q(2\pi i\Delta^{\vee})\subseteq\operatorname{Ker}(\exp_{T})が成り立つ.このことと命題2.18命題2.21より,X(T)P(Δ)X(T)\subseteq P(\Delta)も成り立つ.∎

2.6 Weyl群

定義2.25 (Weyl群)

GGをコンパクト連結Lie群とし,TTをその極大トーラスとする.(G,T)(G,T)Weyl群(Weyl group)を,

𝐖(G,T)=𝐍G(T)/𝐙G(T)=𝐍G(T)/T\mathbf{W}(G,T)=\mathbf{N}_{G}(T)/\mathbf{Z}_{G}(T)=\mathbf{N}_{G}(T)/T

と定める(第2の等号は,系2.15より成り立つ).

注意2.26

GGをコンパクト連結Lie群とし,TTをその極大トーラスとし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.𝐍G(T)\mathbf{N}_{G}(T)GGの閉部分群だからコンパクトであり,そのLie代数は𝐍𝔤(𝔱)=𝔱\mathbf{N}_{\mathfrak{g}}(\mathfrak{t})=\mathfrak{t}である.したがって,Weyl群𝐖(G,T)=𝐍G(T)/T\mathbf{W}(G,T)=\mathbf{N}_{G}(T)/Tは有限である.

gT𝐖(G,T)gT\in\mathbf{W}(G,T)g𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T))に対してLie群TTの自己同型tgtg1t\mapsto gtg^{-1}が代表元ggのとり方によらずに定まり,これによって,Weyl群𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)のLie群TTへの作用が定まる.さらに,この作用の微分とその反傾表現を考えることにより,Weyl群𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)𝔱\mathfrak{t}𝔱\mathfrak{t}^{*}上の連続表現が定まる.

命題2.27

GGをコンパクト連結Lie群とし,TTをその極大トーラスとする.Weyl群𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)TTへの作用に関する軌道空間𝐖(G,T)\T\mathbf{W}(G,T)\backslash Tと,GGの共役類空間(GGの自身への共役による作用に関する軌道空間)GG^{\sharp}を考える.このとき,TTからGGへの包含写像は,𝐖(G,T)\T\mathbf{W}(G,T)\backslash TからGG^{\sharp}への同相写像を誘導する.

証明

二つの点tt, tTt^{\prime}\in T𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)の作用で移り合うならば,あるg𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T)が存在してgtg1=tgtg^{-1}=t^{\prime}となるから,GGにおいて共役である.したがって,TTからGGへの包含写像は,連続写像ι:𝐖(G,T)\TG\iota\colon\mathbf{W}(G,T)\backslash T\to G^{\sharp}を誘導する.GGの任意の元はTTのある元に共役だから(定理2.11),ι\iotaは全射である.ι\iotaの単射性を示す.そのためには,tTt\in TgGg\in Ggtg1Tgtg^{-1}\in Tを満たすとして,あるg1𝐍G(T)g_{1}\in\mathbf{N}_{G}(T)が存在してg1tg11=gtg1g_{1}tg_{1}^{-1}=gtg^{-1}となることを示せばよい.𝐙G(gtg1)\mathbf{Z}_{G}(gtg^{-1})の主連結成分𝐙G(gtg1)0\mathbf{Z}_{G}(gtg^{-1})_{0}はコンパクト連結Lie群であり,TTgTg1gTg^{-1}をともに含む.TTgTg1gTg^{-1}は,GGの極大トーラスだから,𝐙G(gtg1)0\mathbf{Z}_{G}(gtg^{-1})_{0}の極大トーラスでもある.したがって,極大トーラスの共役性(命題2.4)より,あるz𝐙G(gtg1)0z\in\mathbf{Z}_{G}(gtg^{-1})_{0}が存在してzgTg1z1=TzgTg^{-1}z^{-1}=Tを満たす.よって,g1=zgg_{1}=zgと置けば,g1𝐍G(T)g_{1}\in\mathbf{N}_{G}(T)かつg1tg11=zgtg1z1=gtg1g_{1}tg_{1}^{-1}=zgtg^{-1}z^{-1}=gtg^{-1}となる.

𝐖(G,T)\T\mathbf{W}(G,T)\backslash TGG^{\sharp}はともに,コンパクトHausdorff群のコンパクトHausdorff空間への(したがって,固有な)連続作用に関する軌道空間だから,コンパクトHausdorff空間である.前段で示したように,ι\iota𝐖(G,T)\T\mathbf{W}(G,T)\backslash TからGG^{\sharp}への連続全単射だから,同相である.∎

補題2.28

WWを群とし,WW^{\prime}をその部分群とする.WW集合XXであって,WWXXへの作用が自由であり,WW^{\prime}XXへの作用が推移的であるものが存在するとする.このとき,W=WW^{\prime}=Wである.

証明

wWw\in Wを任意にとり,1点xXx\in Xを固定する.WW^{\prime}XXへの作用が推移的であることより,あるwWw^{\prime}\in W^{\prime}が存在してwx=wxw\cdot x=w^{\prime}\cdot xを満たす.WWXXへの作用は自由だから,w=wWw=w^{\prime}\in W^{\prime}を得る.よって,W=WW^{\prime}=Wである.∎

補題2.29

GGをコンパクト連結Lie群,TTをその極大トーラスとし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.このとき,任意のw𝐖(𝔤(),𝔱())w\in\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対して,あるg𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T)が存在して,w=Ad𝔱()(g)1w=\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g)^{*-1}を満たす.

証明

任意のルートαΔ(𝔤(),𝔱())\alpha\in\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対して,ルート鏡映sαs_{\alpha}があるgα𝐍G(T)g_{\alpha}\in\mathbf{N}_{G}(T)を用いてsα=Ad𝔱()(gα)1s_{\alpha}=\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g_{\alpha})^{*-1}と表せることを示せばよい.xαx_{\alpha}, yαy_{\alpha}, zαz_{\alpha}補題2.23のようにとり,tt\in\mathbb{R}とする.任意のhKer(α)h\in\operatorname{Ker}(\alpha)に対して,ad(xα)h=0\operatorname{ad}(x_{\alpha})h=0より

Ad(etxα)h=etad(xα)(h)=h\operatorname{Ad}(e^{tx_{\alpha}})h=e^{t\operatorname{ad}(x_{\alpha})}(h)=h

である.また,ad(xα)zα=yα\operatorname{ad}(x_{\alpha})z_{\alpha}=-y_{\alpha}ad(xα)2zα=ad(xα)yα=zα\operatorname{ad}(x_{\alpha})^{2}z_{\alpha}=-\operatorname{ad}(x_{\alpha})y_{% \alpha}=-z_{\alpha}より

Ad(etxα)zα\displaystyle\operatorname{Ad}(e^{tx_{\alpha}})z_{\alpha} =etad(xα)(zα)\displaystyle=e^{t\operatorname{ad}(x_{\alpha})}(z_{\alpha})
=k=0tkk!ad(xα)kzα\displaystyle=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{t^{k}}{k!}\operatorname{ad}(x_{\alpha})% ^{k}z_{\alpha}
=k=0(1)kt2k(2k)!zαk=0(1)kt2k+1(2k+1)!yα\displaystyle=\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^{k}t^{2k}}{(2k)!}z_{\alpha}-\sum_{% k=0}^{\infty}\frac{(-1)^{k}t^{2k+1}}{(2k+1)!}y_{\alpha}
=cos(t)zαsin(t)yα\displaystyle=\cos(t)z_{\alpha}-\sin(t)y_{\alpha}

である.𝔱()=zαKer(α)\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}=\mathbb{C}z_{\alpha}\oplus\operatorname{Ker}(\alpha)だから,上式より,Ad(etxα)\operatorname{Ad}(e^{tx_{\alpha}})𝔱()\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}を安定にし,したがって,𝔱=𝔱()𝔤\mathfrak{t}=\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}\cap\mathfrak{g}も安定にする.これより,etxα𝐍G(T)e^{tx_{\alpha}}\in\mathbf{N}_{G}(T)である.さらに,t=πt=\piのときは,

Ad(eπxα)h=h(hKer(α)),Ad(eπxα)zα=zα\operatorname{Ad}(e^{\pi x_{\alpha}})h=h\qquad(h\in\operatorname{Ker}(\alpha))% ,\qquad\operatorname{Ad}(e^{\pi x_{\alpha}})z_{\alpha}=-z_{\alpha}

となるから,Ad𝔱()(eπxα)=sα1\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(e^{\pi x_{\alpha}})=s_{\alpha}% ^{*-1}が成り立つ.よって,gα=eπxαg_{\alpha}=e^{\pi x_{\alpha}}と置けばよい.∎

補題2.30

GGをコンパクト連結Lie群,TTをその極大トーラスとし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.Π\Piをルート系Δ(𝔤(),𝔱())\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})の基底とする.このとき,g𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T)Ad𝔱()(g)1(Π)=Π\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g)^{*-1}(\Pi)=\Piを満たすならば,gTg\in Tである.

証明

Π\Piに関する正ルート全体のなす集合をΔ+\Delta_{+}と書き,ρ=(1/2)αΔ+α\rho=(1/2)\sum_{\alpha\in\Delta_{+}}\alphaと置く.iρ|𝔱𝔱i\rho|_{\mathfrak{t}}\in\mathfrak{t}^{*}である(系1.7).𝔱\mathfrak{t}^{*}上の𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)不変な内積,\langle\blank,\blank\rangleを一つ固定し(𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)は有限群だから,このような内積が存在する),この内積が定める線型同型𝔱𝔱\mathfrak{t}\cong\mathfrak{t}^{*}によってiρ|𝔱𝔱i\rho|_{\mathfrak{t}}\in\mathfrak{t}^{*}に対応する元をh𝔱h\in\mathfrak{t}と書く.𝔱\mathfrak{t}^{*}上の内積,\langle\blank,\blank\rangleを複素化して得られる(𝔱())(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}上の非退化対称双線型形式を同じ記号で表すと,補題2.29より,,\langle\blank,\blank\rangle𝐖(𝔤(),𝔱())\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})不変である.したがって,ルート系の一般論(参照1参照2)より,任意のルートαΔ(𝔤(),𝔱())\alpha\in\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})に対して

α(h)=α,iρ0\alpha(h)=\langle\alpha,i\rho\rangle\neq 0

が成り立つ.

g𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T)Ad𝔱()(g)1(Π)=Π\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g)^{*-1}(\Pi)=\Piを満たすとする.すると,Ad𝔱(g)1(iρ|𝔱)=iρ|𝔱\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}}(g)^{*-1}(i\rho|_{\mathfrak{t}})=i\rho|_{% \mathfrak{t}}であり,Ad𝔱(g)1\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}}(g)^{*-1}𝔱\mathfrak{t}^{*}上の内積,\langle\blank,\blank\rangleを不変にするから,Ad𝔱(h)=h\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}}(h)=hである.すなわち,g𝐙G(h)g\in\mathbf{Z}_{G}(h)である.𝐙G(h)\mathbf{Z}_{G}(h)は連結であり(系2.16),そのLie代数は

𝐙𝔤(h)=𝐙𝔤()(h)𝔤=𝔱()𝔤=𝔱\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}}(h)=\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}(h)\cap% \mathfrak{g}=\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}\cap\mathfrak{g}=\mathfrak{t}

だから(2.6節より𝐙𝔤()(h)=𝔱()\mathbf{Z}_{\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})}}(h)=\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}であることを用いた),𝐙G(h)=T\mathbf{Z}_{G}(h)=Tである.よって,gTg\in Tである.∎

定理2.31

GGをコンパクト連結Lie群,TTをその極大トーラスとし,𝔤=Lie(G)\mathfrak{g}=\operatorname{Lie}(G)𝔱=Lie(T)\mathfrak{t}=\operatorname{Lie}(T)と置く.𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)から(𝔱())(\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*}への写像gTAd𝔱()(g)1gT\mapsto\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g)^{*-1}は,𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)から𝐖(𝔤(),𝔱())\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})への群同型を与える.

証明

g𝐍G(T)g\in\mathbf{N}_{G}(T)に対して,Ad𝔱(g)=id𝔱\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}}(g)=\mathrm{id}_{\mathfrak{t}}であるための必要十分条件は,TTから自身への写像tgtg1t\mapsto gtg^{-1}が恒等写像であること,すなわち,g𝐙G(T)g\in\mathbf{Z}_{G}(T)であることである.したがって,ϕ(gT)=Ad𝔱()(g)1\phi(gT)=\operatorname{Ad}_{\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})}}(g)^{*-1}によって定まる写像ϕ:𝐖(G,T)𝐺𝐿((𝔱()))\phi\colon\mathbf{W}(G,T)\to\mathit{GL}((\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})^{*})は,単射群準同型である.あとは,ϕ(𝐖(G,T))=𝐖(𝔤(),𝔱())\phi(\mathbf{W}(G,T))=\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})を示せばよい.

補題2.29より,𝐖(𝔤(),𝔱())ϕ(𝐖(G,T))\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})\subseteq% \phi(\mathbf{W}(G,T))である.また,Weyl群𝐖(𝔤(),𝔱())\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})はルート系Δ(𝔤(),𝔱())\Delta(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(\mathbb{C})})の基底全体のなす集合に推移的に作用し(参照),𝐖(G,T)\mathbf{W}(G,T)は同じ集合に自由に作用する(補題2.30).よって,補題2.28より,ϕ(𝐖(G,T))=𝐖(𝔤(),𝔱())\phi(\mathbf{W}(G,T))=\mathbf{W}(\mathfrak{g}_{(\mathbb{C})},\mathfrak{t}_{(% \mathbb{C})})である.∎