3.1 Weylの定理
補題3.1
を局所コンパクト連結Hausdorff群,をその離散部分群とし,はコンパクトであるとする.このとき,は有限生成である.
証明
がコンパクトであることより,コンパクト集合であってを満たすものがとれる.必要ならばを大きくとりなおして,(は,の内部を表す)であり,かつであるとしてよい.はコンパクト集合でありはその開被覆だから,有限部分集合であってを満たすものが存在する.このことから帰納的に,任意のに対してであることがわかる.だったから,を得る.したがって,任意のは(,)と書けるが,このときだから,である.よって,は群として有限部分集合によって生成される.∎
補題3.2
連結位相群の離散正規部分群は,中心に含まれる.
証明
を任意にとる.からへの連続写像は,が連結でが離散であることより定値であり,単位元をに移すから,常に値をとる.すなわち,である.∎
補題3.3
をコンパクト連結Lie群,をその連結な重被覆Lie群()とし,と置く.とをそれぞれとの極大トーラスとし,これらは共通のLie代数をもつとする.
-
(1)
であり,はの連結な重被覆Lie群である.
-
(2)
かつが成り立つ.
証明
(1) はをLie代数にもつの連結部分Lie群だから,に等しい.Lie群の準同型の微分はだから,はLie群の被覆準同型である.さらに,補題3.2と系2.13よりだから,の被覆次数はの被覆次数と等しくである.
(2) との指数写像はを満たすから,かつである.よって,命題2.21と格子に関する一般論より,かつが成り立つ. ∎
定理3.4 (Weylの定理)
連結Lie群がコンパクトかつ半単純なLie代数をもつならば,はコンパクトである.
証明
必要ならば普遍被覆Lie群を考えることで,一般性を失わず,は単連結であると仮定する.がコンパクトであることより,と同型なLie代数をもつコンパクト連結Lie群が存在し,はのある離散正規部分群による商と同型である.がコンパクトであることを示すためには,が有限であることを示せばよい.
は,有限生成であり(補題3.1),中心に含まれる(補題3.2)から可換である.したがって,有限生成可換群の構造定理より,もしが無限ならば,任意のに対して指数の部分群が存在する.等化準同型をと書くと,はの重被覆Lie群である.はコンパクトだから,もコンパクトである.ここで,のCartan部分代数を一つ固定し,これをLie代数にもつとの極大トーラスをそれぞれとと書く.また,と置き,とを前小節のとおりに定める.すると,
である(命題2.24 (1),補題3.3).一方で,が半単純であることより,とはともに実ベクトル空間上の格子だから,である.これは,を任意にとれることに矛盾する.よって,背理法より,は有限である.∎
系3.5
をコンパクト連結Lie群とし,をその普遍被覆Lie群とする.このとき,次の条件は同値である.
-
(a)
は半単純である.
-
(b)
中心は有限である.
-
(c)
はコンパクトである.
-
(d)
基本群は有限である.
3.2 Cartan部分群の性質
命題3.6
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,と置く.と置き,これをLie代数にもつの連結部分Lie群をと書く.
-
(1)
はコンパクトである.
-
(2)
からへの写像は,Lie群の全射被覆準同型である.
証明
(2) からへの写像を,と書く.の任意の元との任意の元は可換だから,はLie群の準同型である.さらに,よりは同型であり,は連結だから,はLie群の全射被覆準同型である. ∎
命題3.7
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,と置く.と置き,これをLie代数にもつの連結部分Lie群をと書く(命題3.6 (1)より,はコンパクトである).このとき,の極大トーラスに対して,はのCartan部分群であり,の任意のCartan部分群は,の一意な極大トーラスを用いてこのように表せる.
証明
のCartan部分代数に対して,はのCartan部分代数であり,の任意のCartan部分代数は,の一意なCartan部分代数を用いてこのように表せる.さらに,をLie代数にもつの極大トーラスをと書くと,をLie代数にもつのCartan部分群はである.これで,主張が示された.∎
定理3.8
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,をそのCartan部分群とする.このとき,の任意の元は,のある元に共役である.
証明
系3.9
コンパクトなLie代数をもつ連結Lie群の指数写像は,全射である.
系3.10
コンパクトなLie代数をもつ連結Lie群のすべてのCartan部分群の交叉は,中心に等しい.
証明
命題3.11
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,をその連結可換部分Lie群とする.このとき,中心化子は,のCartan部分群であってを含むもの全体の合併に等しい.
証明
任意のに対して,のCartan部分群であってとを含むものが存在することを示せばよい.,と置く.をLie代数にもつの連結部分Lie群はであり,これはを満たす.そこで,必要ならばを改めてと置くことで,一般性を失わず,であると仮定する.
系3.12
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とする.
-
(1)
の連結可換部分Lie群に対して,中心化子は連結である.
-
(2)
のCartan部分群に対して,中心化子はに等しい.特に,はにおいて極大可換である.
証明
命題3.11から従う.∎
系3.13
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,と置く.をの部分集合とし,の任意の二つの元は可換であるとする.このとき,は連結である.
証明
仮定より,はの可換部分Lie代数である.これをLie代数にもつの連結部分Lie群をと置くと,だから,主張は系3.12 (1)から従う.∎
3.3 部分群と商群のCartan部分群
補題3.14
とを標数の可換体上の簡約Lie代数とし,をLie代数の全射準同型とする.このとき,のCartan部分代数に対して,はのCartan部分代数である.44 4 この主張は,とが一般の(標数とは限らない)可換体上の有限次元Lie代数であっても成り立つ.一般の場合の証明については,Bourbaki [1, §VII.2.1, Corollaire 2 du Proposition 4]を参照のこと.
証明
命題3.15
とをコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,をLie群の全射準同型とする.
-
(1)
の任意のCartan部分群に対して,はのCartan部分群である.さらに,の任意のCartan部分群はこのように表せる.
-
(2)
とする.このとき,写像とは,のCartan部分群とのCartan部分群との間の(互いに他の逆である)一対一対応を与える.
証明
(1) 命題1.2より,とは簡約である.は連結ではLie群の全射準同型だから,はLie代数の全射準同型である.をCartan部分群とすると,はのCartan部分代数だから,はのCartan部分代数である(補題3.14).は,をLie代数にもつの連結部分Lie群だから,のCartan部分代数である.
任意のCartan部分群がのあるCartan部分群のによる像として書けることを示す.Cartan部分群を一つ固定する.前段の結果よりはのCartan部分群だから,Cartan部分群の共役性(命題2.4)より,あるが存在してとなる.は全射だからと書けて,が成り立つ.
(2) は全射だから,任意のCartan部分群に対して,である.また,任意のCartan部分群に対して,だから(系3.10),である.これらのことと(1)より,主張の一対一対応が成り立つ. ∎
命題3.16
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群とし,をその閉部分群とする.
-
(1)
の任意のCartan部分群に対して,のあるCartan部分群が存在して,と書ける.
-
(2)
がの閉正規部分群であるとする.このとき,の任意のCartan部分群に対して,はのCartan部分群である.
証明
3.4 Cartan部分群と準同型
命題3.17
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群,をLie群とし,,,と置く.このとき,Lie代数の準同型に対して,次の条件は同値である.
-
(a)
の持ち上げが存在する.
-
(b)
の持ち上げが存在する.
証明
がの持ち上げならば,はの持ち上げである.
をの普遍被覆Lie群とし,をの連結部分Lie群であってをLie代数にもつものとする.は,のCartan部分群である.
命題3.18
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群とし,をLie群とする.このとき,Lie群の準同型に対して,次の条件は同値である.
-
(a)
は単射である.
-
(b)
は単射である.
証明
の任意の元はのある元に共役だから(定理3.8),の正規部分群が自明であることとが自明であることとは同値である.とすれば,主張の同値性を得る.∎
3.5 基本群と中心
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群とする.はの普遍被覆Lie群だから(命題2.1 (1)),基本群はに自然に同型である.この同型と,包含準同型が誘導するからへの準同型を合成することで,準同型が得られる.次の定理では,この記号を用いる.
定理3.19
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群とし,,,と置く.このとき,群準同型は全射でを満たし,したがって,群同型
を誘導する(命題2.24 (2)よりであることに注意する).
証明
まず,が単連結である場合を考える.このとき,だから,示すべき主張は,である.ルート系の基底を一つ固定し,に関する優整ベクトルを単に優整ベクトルということにする.分裂簡約Lie代数に対する最高ウェイト理論より,が優整ベクトルであれば,有限次元既約加群であってとに関して最高ウェイトをもつものが存在する.いまは単連結だから,これはの連続表現に持ち上がる.はウェイトのウェイト空間に倍写像として作用するから,は上の次元部分表現を定め,これがの持ち上げとなる.したがって,である.に属する優整ベクトルの全体はを加法群として生成するから,を得る.このことと命題2.18と命題2.21より,が成り立つ.これで,主張が示された.
系3.20
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群とし,,,と置く.このとき,次の条件は同値である.
-
(a)
は単連結である.
-
(b)
である.
-
(c)
である.
定理3.21
証明
系3.22
をコンパクトなLie代数をもつ連結Lie群,をそのCartan部分群とし,,,と置く.このとき,次の条件は同値である.
-
(a)
である.
-
(b)
である.
-
(c)
である.