3.1 分裂簡約Lie代数とそのルート系
定義3.1 (分裂半単純・簡約Lie代数)
を標数の可換体上の簡約Lie代数とする.の分裂化Cartan部分代数(splitting Cartan subalgebra)とは,のCartan部分代数であって,が同時対角化可能であるものをいう.このようなが存在するとき,は分裂可能(splittable)であるといい,組を分裂簡約Lie代数(split reductive Lie algebra)という.さらに,が半単純・単純である場合には,それぞれ,組を分裂半単純Lie代数(split semisimple Lie algebra)・分裂単純Lie代数(split simple Lie algebra)という.
分裂簡約Lie代数からへの同型(isomorphism)とは,同型であってを満たすものをいう.これが存在するとき,とは同型(isomorphic)であるという.
を標数の可換体上の簡約Lie代数とし,をそのCartan部分代数とすると,は可換であり,の任意の元は半単純である(定理1.35).したがって,がの分裂化Cartan部分代数であるためには,の任意の元が三角化可能であれば十分である.
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とするとき,写像に対応するの同時固有空間を,と書く.すなわち,
と書く.明らかに,となりうるのはのときだけである.
定義3.2 (分裂簡約Lie代数のルート系)
標数の可換体上の分裂簡約Lie代数のルート系(root system)を,
と定める.の各元を,のルート(root)という.
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とすると,は同時対角化可能であり,定理1.35よりだから,直和分解
が成立する.これを,のルート空間分解(root space decomposition)といい,各()を,ルート空間(root space)という.は有限次元だから,ルート系は有限である.
注意3.3
を標数の可換体上の簡約Lie代数の有限族とし,と置く.このとき,のCartan部分代数は,各のCartan部分代数を用いてと書ける(命題1.5).()に対して,
だから,が対角化可能であるための必要十分条件は,各が対角化可能であることである.したがって,がの分裂化Cartan部分代数であるための必要十分条件は,各がの分裂化Cartan部分代数であることである.さらに,これらの条件の下で,に対して,
が成り立つ.特に,からへの自然な線型同型写像は,からへの全単射を与える.
注意3.4
注意3.5
を標数の可換体とし,をその拡大体とする.を上の分裂簡約Lie代数とすると,はのCartan部分代数であり(命題1.6 (1)),は同時対角化可能だから,は上の分裂簡約Lie代数である.また,に対して,
が成り立つ.特に,からへの写像は,からへの全単射を与える.これにより,ルート系は,ルート系のへの係数拡大と同一視できる.
命題3.6
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とする.
-
(1)
任意の, に対して,が成り立つ.
-
(2)
を不変な双線型形式とする.このとき,任意の, であってを満たすものに対して,が成り立つ.
-
(3)
を非退化かつ不変な双線型形式とする.このとき,任意のに対して,双線型形式は非退化である.特に,双線型形式は非退化である.
証明
(1) ,とすると,任意のに対して
だから,である.よって,である.
(2) であるとして,を満たすをとる.,とすると,の不変性より
だから,である.よって,である.
(3) がを満たすとする.(2)より,任意のに対してもだから,である.は非退化だから,これより,を得る.同様にして,がを満たすならばであることもわかる.よって,は非退化である.特に,として,が非退化であることを得る. ∎
系3.7
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とする.任意のに対して,のすべての元は冪零である.
証明
は有限集合だから,をがと交わらないようにとれる.このとき,任意のに対してだから(命題3.6 (1)),である.よって,のすべての元は冪零である.∎
3.2 分裂簡約Lie代数における三対
定義3.8 (三対)
の標準基底をと書く.Lie代数における三対(-triple)とは,の元の組であって,, , をそれぞれ, , に移すからへの線型写像が単射準同型であるものをいう.
注意3.9
Lie代数の元, , が,少なくとも一つはでなく,関係式,,を満たすとする.このとき,容易に確かめられるように,, , はいずれもでない.さらに,, , はの異なる固有空間に属するから,これらは線型独立である.よって,このとき,は三対である.
定理3.10
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とする.各に対して,次が成り立つ.
-
(1)
, およびは次元である.
-
(2)
であってを満たすものが一意に存在する.
-
(3)
を(2)のとおりに定める.任意のに対して,であってを満たすものが一意に存在する.さらに,このとき,は三対である.
証明
上の非退化かつ不変な双線型形式を一つ固定する(は簡約だから,の有限次元表現であって,非退化なトレース形式をもつものが存在する(参照).このトレース形式をとすればよい(参照)).命題3.6 (3)より,やも非退化である.次の4段階に分けて,主張を示す.
(I) が次元であることを示す.上の双線型形式は非退化だから,であって任意のに対してを満たすものが(一意に)存在する.,とすると,(命題3.6 (1))であり,任意のに対して
だから,が非退化であることより
が成り立つ.一方で,であることとが非退化であることより,である.よって,であり,は次元である.
(II) を満たすが一意に存在することを示す.(I)で示したようには次元だから,あとは,であることをいえばよい.は次元だから,とのそれぞれの次元部分ベクトル空間とを,を満たすようにとれる.ここで,であると仮定すると,となる.したがって,と置くと,
となるから,はの冪零部分Lie代数である.の冪零根基はだから(参照),のすべての元は冪零である(参照).一方で,は同時対角化可能でもあるから,となる.随伴表現が上で単射であることと合わせれば,を得るが,これは(I)に反する.よって,背理法より,である.
(III) 任意のに対して,が三対となるようなをとれることを示す.が非退化であることと3.2節よりだから,をとなるようにとれる., , はいずれもでなく,ルート空間分解に関して異なる直和因子に属するから,これらは線型独立である.また,これらは関係式
を満たす.よって,は三対である.
3.3 被約ルート系の公理を満たすことの証明
補題3.11
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とすると,任意の, に対して,である.ここで,は,定理3.10によって定まるものとする.
証明
補題3.12
を標数の可換体上のLie代数,をの有限次元部分ベクトル空間とし,に対して
と書く.,,,とし,これらは次の条件を満たすとする33 3 本小節の範囲では,が標数の可換体上の分裂簡約Lie代数であり,が定理3.10のように定まる三対である場合だけで十分である.一般の場合の主張は,存在定理(定理3.22)の証明で用いられる..
-
(i)
である.
-
(ii)
は三対である.
-
(iii)
上の線型写像とは局所冪零である.
このとき,
と定めると,次が成り立つ.
-
(1)
はを安定にし,は,によって定まる上の線型写像に等しい.
-
(2)
は,によって定まる上の線型写像に等しい.
-
(3)
を(2)のとおりに定める.このとき,任意のに対して,である.
証明
(1) 条件(i)より,直和分解が成立する.に対しては,かつだから,
である.また,容易に確かめられるように,(その標準基底をと書く)においてが成り立つから,条件(ii)と(i)より,
である.よって,はを安定にし,が成り立つ.
(2) (1)より,任意のとに対して,
である.よって,が成り立つ.
(3) とする.はの自己同型だから,
である.ここで,(1)と(2)より,はを安定にし,を満たす.よって,上式と合わせて,
を得る. ∎
定理3.13
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とする.このとき,は上の被約ルート系であり,の双対ルートは
によって与えられ,ルート鏡映は
によって与えられる.特に,が分裂半単純Lie代数ならば,は上の被約ルート系である.ここで,は,定理3.10によって定まるものとする.
証明
注意3.4より,である.また,各に対して,かつだから,主張の式によって定義される線型写像は鏡映である.
以下,と鏡映()が被約ルート系の公理(RS1)–(RS4)(参照)を満たすことを確かめる.
(RS1) が有限であることとを含まないことは明らかである.が任意のに対してを満たすとすると,ルート空間分解より,である.すなわち,である.これは,上の線型形式であって任意のにおいて値をとるものがしかないことを意味する.よって,である.
(RS2) とし,三対を定理3.10のようにとる.すると,系3.7よりとは冪零だから,これらは補題3.12の仮定を満たす.したがって,任意のに対して,とはの自己同型によって移り合う.よって,はを安定にする.
(RS3) 補題3.11で示したように,任意の, に対して,である.
定理3.13の状況で,とするとき,記号の濫用で,に対しても
として,双対ルートやルート鏡映を上に拡張する.すなわち,と置くと直和分解が成立するが,は上では値をとるとして拡張し,は上では恒等写像であるとして拡張する.このとき,は自然な線型同型を通してに対応するから,しばしばこれらを同一視してなどと書く.また,Weyl群のへの作用も,上には自明に作用するとして,への作用に拡張する.
系3.14
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とし,をルート系の基底とする.このとき,はの基底である.特に,が分裂半単純Lie代数ならば,はの基底である.ここで,は,定理3.10によって定まるものとする.
系3.15
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数,, を線型独立な二つのルートとし,
と置く.
-
(1)
は,, を用いてと書ける.
-
(2)
(1)のとについて,である.
-
(3)
(1)のとについて,と置くと,であり,これは, , , のいずれかである.
命題3.16
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とする.二つのルート, について,ならば,である.
証明
ならばだから,主張は明らかである.である場合を考える.は被約ルート系だから(定理3.13),このとき,とは線型独立である(参照).三対を定理3.10のようにとり,これと随伴表現によってを加群とみなす.を系3.15のとおりに定めると,
はの部分加群であり(命題3.6 (1)),各はのウェイト(系3.15 (2))のウェイト空間であり,これらはすべて次元である(定理3.10 (1)).したがって,有限次元加群のウェイトは, , , であり,これらの重複度はすべてだから,系2.13 (4)より,は最高ウェイトの有限次元既約加群に同型である.のへの作用は,でない各ウェイト空間を,そのウェイトにを加えたウェイト空間に全射に移す.よって,
が成り立つ.∎
系3.17
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数,をルート系の基底とし,に関する正ルート全体のなす集合を,負ルート全体のなす集合をと書く.
-
(1)
が生成するの部分Lie代数は,である.
-
(2)
が生成するの部分Lie代数は,である.
-
(3)
が生成するの部分Lie代数は,である.特に,が分裂半単純Lie代数ならば,はをLie代数として生成する.
3.4 存在定理
本節の以下の部分では,をKroneckerのデルタとする.
をルート系の基底とすると,異なる二つの単純ルート, に対して,Cartan整数は以下の整数である(参照).本節の以下の部分では,このことに注意する.
補題3.18
を標数の可換体上の有限次元ベクトル空間とする.を上のルート系とし,をその基底とする.が自由に生成する単位的結合代数(の標準基底をと書く)を考え,上の線型写像, , ()を,
によって定める(まずとを定め,次にそれらを用いてを次数に関して再帰的に定める).このとき,任意の, に対して,次が成り立つ.
-
(1)
.
-
(2)
.
-
(3)
.
-
(4)
.
証明
(1), (4) 明らかである.
(3) 任意の, , に対して,
である.よって,が成り立つ.
(2) 任意のに対して,(1), (3), (4)より,
である.よって,任意の, , に対して
だから,が成り立つ. ∎
補題3.19
を標数の可換体上の有限次元ベクトル空間とする.を上の被約ルート系とし,をその基底とする.を,に対する生成元
と, に対する関係式
-
(R1)
-
(R2)
-
(R3)
-
(R4)
によって定まるLie代数とする.に対して
と書き,
と定める.
-
(1)
任意の, に対して,である.
-
(2)
各に対して,,であり,直和分解が成立する.
-
(3)
, , はの部分Lie代数であり,直和分解が成立する.(したがって,に対しては,である.)
-
(4)
はの基底である.
-
(5)
はLie代数としてによって生成される.
-
(6)
はLie代数としてによって生成される.44 4 より強く,とがそれぞれとを基本族とする自由Lie代数であることまでいえる.証明は,Bourbaki [3, §VIII.4.2, Proposition 3]を参照のこと.
証明
(1) ,とすると,任意のに対して
だから,である.よって,である.
(2) ,,は,それぞれ関係式(R1), (RS2), (RS3)から従う.
はベクトル空間として「, , ()からなる有限列において任意の結合順でLie括弧積をとったもの」全体で生成されるが,前段の結果と(1)より,このような元はあるに含まれる.よって,が成り立つ.さらに,線型代数の一般論より,この和は直和である.
(3), (4), (5), (6)(の線型独立性を除く) (1)より,, , はの部分Lie代数である.(2)より,これらの和は直和である.
, , が生成するの部分Lie代数を,それぞれ, , と置く.これらは,それぞれ, , に含まれる.主張を示すためには,が全体に一致することをいえばよい.はの生成元, , をすべて含むから,そのためには,がの部分Lie代数であることをいえばよい.そのためには,が, , によって安定であることをいえば十分である.このことは,がベクトル空間として
の全体によって生成されることと,次の主張から従う.
主張3.20
上記の元に, , を施した結果について,次の表に述べたことが成り立つ.ここで,と置いた.
主張3.20の証明
の列の主張は,関係式(R1), (R2), (R3)から従う.の列の主張との列の主張は同様に示せるから,前者のみを考える.の行の主張は,明らかである.の行の主張は,(1)と(2)よりであることから従う.の主張について,のときは,関係式(R4)より,
である.また,であるとすると,関係式(R4)より,
となる.よって,帰納的に,のときであることを得る.//
補題3.21
を標数の可換体上の有限次元ベクトル空間とする.を上の被約ルート系とし,をその基底とする., , , を,補題3.19のとおりに定義する.異なる二つの単純ルート, に対して
と定め,の全体が生成するのイデアルをと置き,の全体が生成するのイデアルをと置く.このとき,
が成り立つ.
証明
どちらも同様だから,に関する主張を示す.はのイデアルであり,特に安定だから,線型代数の一般論より,
が成り立つ.あとは,がに含まれることを示せばよい.以下,の全体が生成するの部分ベクトル空間を,と置く.
まず,を示す.はLie代数としてによって生成されるから(補題3.19 (6)),そのためには,任意の, , ()に対してであることをいえばよい.のとき,関係式(R2)と(R4)より,
である(ならばであり,ならばだから,最後の等式が成り立つ).のとき,関係式(R2), (R3), (R4)と補題2.10 (2)より,
である.よって,いずれの場合にも,が成り立つ.
次に,を示す.の随伴表現に対応する包絡代数の表現をと書くと,
である.これで,主張が示された.∎
定理3.22 (存在定理)
を標数の可換体上の有限次元ベクトル空間とする.を上の被約ルート系とし,をその基底とする.を,に対する生成元
と, に対する関係式
-
(R1)
-
(R2)
-
(R3)
-
(R4)
-
(R5)
(の場合)
-
(R6)
(の場合)
によって定まるLie代数とし,と定める.
-
(1)
は分裂半単純Lie代数である.
-
(2)
はの基底である.
-
(3)
(2)より,各に対してをに移すことでからへの線型同型写像が定まるが,これが誘導する線型同型写像は,ルート系からへの同型である.
証明
補題3.19と補題3.21の記号を用いると,は商Lie代数であり,等化準同型をと書くと,,,である.補題3.19 (2), (3)より,直和分解
が成立する.このことと補題3.21より,と置くと,直和分解
が成立する.
直和分解3.4節におけるに対応する因子については,だから(補題3.21),はからへの同型を与える.はの基底だから,の基底である.これで(2)が示され,したがって,線型同型写像を(3)のように定義できる.
主張3.23
とする.
-
(1)
上の線型写像とは局所冪零である.
-
(2)
の自己同型を
と定めると((1)より可能である),任意のに対して,が成り立つ.
主張3.23の証明
(1) どちらも同様だから,が局所冪零であることを示す.は上の導分だから,を繰り返し施すとになる元全体はの部分Lie代数をなす.任意のに対して,, , にを繰り返し施すとになることを示せばよい.これは,
であることから従う.
(2) であり,は(**) ‣ 3.4節のように書け,であることと関係式(R2), (R3), (R4)よりは三対である(注意3.9).よって,と, , は補題3.12の仮定を満たし,主張はこの補題の(3)から従う. //
主張3.24
()は,ならばであり,ならば次元であり,それ以外ならばである.特に,は有限次元であり,直和分解
が成立する.
主張3.24の証明
以下,ルートと正の整数に対して,
を示す.被約ルート系の任意のルートがWeyl群の作用によって単純ルートに移せること(参照)と主張3.23 (2)より,単純ルートに対してこれを示せば十分である.はLie代数としてによって生成されるから(補題3.19 (5)),はLie代数としてによって生成される.したがって,はベクトル空間として
| , , において任意の結合順でLie括弧積をとったもの(,, , ) |
の全体によって生成される.3.4節は直和因子に属するが(補題3.21 (1)),となるのはかつのときだけである.のとき,3.4節は常にだから,である.のとき,3.4節はだから,である.もしならばとなりすでに示した(2)に矛盾するから,であり,を得る.これで,主張が示された.//
主張3.25
は分裂半単純Lie代数であり,そのルート系はに等しい.
主張3.25の証明
まず,を示す.上式より,そのためには,任意のルートに対してを示せばよい.被約ルート系の任意のルートがWeyl群の作用によって単純ルートに移せること(参照)と主張3.23 (2)より,単純ルートに対してこれを示せば十分である.この場合,主張3.24より,である.また,関係式(R2), (R3), (R4)とであることよりは三対だから(注意3.9),はの単純部分Lie代数である.よって,
が成り立つ.
次に,を示す.を任意にとる.前段で示したようにであり,(**) ‣ 3.4節が成り立つから,である.一方で,はのイデアルだから,である.したがって,である.任意のに対してこれが成り立ち,はの基底だから,である.
がの分裂化Cartan部分代数であること (**) ‣ 3.4節のとおりはの同時固有空間の直和に同時固有値の同時固有空間はである.よって,はの分裂化Cartan部分代数である(定理1.35).
であること (**) ‣ 3.4節と主張3.24から従う. //
これで,すべての主張が示された.∎
3.5 一意性定理と同型定理
命題3.26
を標数の可換体上の分裂簡約Lie代数とし,をルート系の基底とする.各に対して,三対を定理3.10のようにとる.このとき,任意の, に対して,次が成り立つ.
-
(1)
.
-
(2)
.
-
(3)
.
-
(4)
.
-
(5)
(の場合).
-
(6)
(の場合).
定理3.27 (一意性定理)
証明
定理3.28 (同型定理)
とを標数の可換体上の分裂半単純Lie代数とし,とをそれぞれルート系との基底とする.をルート系からへの同型であってをに移すものとし,各に対して,を線型同型とする.このとき,からへの同型であって
を満たすものが一意に存在する.
証明
各とに対して,における三対を定理3.10のようにとる.必要ならば各をスカラー倍だけ調整して,であるとする.
系3.29
標数の可換体上の分裂可能簡約Lie代数の分裂化Cartan部分代数は,すべての下で共役である.
証明
命題3.30
標数の可換体上の分裂半単純Lie代数に対して,次の条件は同値である.
-
(a)
は単純である.
-
(b)
は既約である.
証明
明らかに,ととは同値である.以下では,である(したがって,である)場合を考える.
が二つの空でない被約ルート系との直和に分解されるとする.存在定理(定理3.22)より,各に対して,に同型なルート系をもつ分裂半単純Lie代数がとれる.だから,である.また,これらの直和は,に同型なルート系をもつ分裂半単純Lie代数である(注意3.3).同型定理(定理3.28)より,Lie代数はに同型である.よって,は単純でない.
が単純でないとすると,はでない半単純Lie代数との(Lie代数としての)直和に分解できる.はのCartan部分代数だから,各のCartan部分代数を用いて,と書ける.がの分裂化Cartan部分代数であることから,各はの分裂化Cartan部分代数であり,からへの自然な同型によって,ルート系は二つの空でないルート系との直和に移される(注意3.3).よって,は可約である. ∎
を標数の可換体とする.存在定理(定理3.22),同型定理(定理3.28),系3.29より,分裂可能半単純Lie代数の同型類,分裂半単純Lie代数の同型類,被約ルート系の同型類は一対一に対応する.さらに,命題3.30より,その中で,分裂可能単純Lie代数の同型類,分裂単純Lie代数の同型類,既約な被約ルート系の同型類は一対一に対応する.分裂可能半単純Lie代数または分裂半単純Lie代数が型(),型(),型(),型(),型,型,型,型,型であるとは,そのルート系がその型であることをいう.型,型,型,型を総称して古典型(classical type)といい,型,型,型,型,型を総称して例外型(exceptional type)という.以外の各型のルート系は既約だから,それらには分裂可能単純Lie代数が対応する.
3.6 古典型分裂単純Lie代数
本小節では,標数の可換体上の古典型分裂(半)単純Lie代数を,具体的に構成する.以下,次単位行列をと書き,行列単位をと書く.また,上の行列全体のなす空間を(の場合は,)と書き,上の次対称行列全体のなす空間をと書き,上の次歪対称行列全体のなす空間をと書く.
()型の分裂単純Lie代数
()型の分裂単純Lie代数
対称双線型形式を,標準基底に関して行列表示
をもつものとして定める.すると,
は半単純Lie代数であり(参照),
はその分裂化Cartan部分代数である(Cartan部分代数であることは,定理1.35を用いて確かめられる).対応するルート系は
| 各は,で与えられる元 |
だから,は型の分裂単純Lie代数である.各ルートの双対ルートは
であり,ルート空間は
である(の標準基底をと書いた).
次に,型の分裂単純Lie代数を,別の方法で実現する.を
と定め,Lie代数の自己同型をと書く.この自己同型は,
で与えられる.,と置くと,も型の分裂単純Lie代数である.とや,対応するルート系などを求めよう.のによる押し出しは,標準基底に関して行列表示
をもつ対称双線型形式だから,
である.このLie代数を,と書く.また,
であり,対応するルート系は
| 各は,で与えられる元 |
であり,各ルートの双対ルートは
であり,ルート空間は
である(の標準基底をと書いた).
さらに,がの平方根をもつと仮定し,その一つをと書く.を
と定め,Lie代数の自己同型をと書く.この自己同型は,
で与えられる.,と置くと,も型の分裂単純Lie代数である.とを求めよう.のによる押し出しは,標準基底に関して行列表示
をもつ対称双線型形式だから,
である.また,
である.対応するルート系なども,前段と同様にして求められる.
()型の分裂単純Lie代数
()型の分裂(半)単純Lie代数
対称双線型形式を,標準基底に関して行列表示
をもつものとして定める.すると,
は半単純Lie代数であり(参照),
はその分裂化Cartan部分代数である(Cartan部分代数であることは,定理1.35を用いて確かめられる).対応するルート系は
| 各は,で与えられる元 |
だから,は型の分裂半単純Lie代数(ならば,分裂単純Lie代数)である.各ルートの双対ルートは
であり,ルート空間は
である.
次に,型の分裂単純Lie代数を,別の方法で実現する.を
と定め,Lie代数の自己同型をと書く.この自己同型は,
で与えられる.,と置くと,も型の分裂単純Lie代数である.とや,対応するルート系などを求めよう.のによる押し出しは,標準基底に関して行列表示
をもつ対称双線型形式だから,
である.このLie代数を,と書く.また,
であり,対応するルート系は
| 各は,で与えられる元 |
であり,各ルートの双対ルートは
であり,ルート空間は
である.
さらに,がの平方根をもつと仮定し,その一つをと書く.を
と定め,Lie代数の自己同型をと書く.この自己同型は,
で与えられる.,と置くと,も型の分裂単純Lie代数である.とを求めよう.のによる押し出しは,標準基底に関して行列表示
をもつ対称双線型形式だから,
である.また,
である.対応するルート系なども,前段と同様にして求められる.
3.7 分裂可能単純Lie代数の分類
本小節では,標数の可換体上の, , , , 型の(同型を除いて一意に存在する)分裂可能単純Lie代数を,それぞれ, , , , と書く.
定理3.31 (分裂可能単純Lie代数の分類)
を標数の可換体とする.次に挙げるLie代数は,いずれも上の分裂可能単純Lie代数である.上の任意の分裂可能単純Lie代数は,これらのいずれかに同型である.(表1も参照のこと.)
-
•
()
-
•
()
-
•
()
-
•
()
-
•
, , , ,
表 1: 分裂可能単純Lie代数の分類 型 分裂可能単純Lie代数 Dynkin図形 () () () ()
証明
存在定理(定理3.22),同型定理(定理3.28),系3.29,命題3.30より,分裂可能単純Lie代数の同型類と被約な既約ルート系の同型類とは一対一に対応する.よって,主張は,被約な既約ルート系の分類と前小節で述べた古典型分裂可能単純Lie代数の構成から従う.∎
系3.32 (標数の代数閉体上の単純Lie代数の分類)
を標数の代数閉体とする.次に挙げるLie代数は,いずれも上の単純Lie代数である.上の任意の単純Lie代数は,これらのいずれかに同型である.
-
•
()
-
•
(または)
-
•
()
-
•
, , , ,
証明
は代数閉だから,上の任意の単純Lie代数は分裂可能であり,前小節で述べたようにかつである.よって,主張は,分裂可能単純Lie代数の分類定理(定理3.31)から従う.∎